第11話 天使の涙にもらい泣きダム決壊する桃子
「貴方は・・・どちら様ですか?」
桃子が声をかけると、あの電車で出会った彼女は桃子が誰だかわからないようだった。それもそのはず。彼女と出会ったとき、桃子は素顔がバレないように地味女に擬態していた。そして今は素顔のまま、極上の美人なのである。別人だ。
(にゃーんと、、わからないでありますか?あ、そそそそうかぁ!出会ったときは擬態していたんだった。。てへっとぺろりんちょ☆)
「あ、そうだよね。わからないよね。。失敬失敬。私、桃子です。貴方が電車で酔っ払いに絡まれていたときにそばにいた・・・。」
「え、ええ!?あ、あの時の人?うそっ?でも、、雰囲気が、その、、」
「ああ、あのときは、ちょっと素性を隠してて・・・。全然違うでしょ?笑」メンゴ
「あ、確か交番で頂いた名刺に・・・。ピーチさんって・・・漫画家さんって・・・」
「そう。私、ちょっとだけ有名人で。でもたいしたことないよ?それより、、なんで泣いてるの?私、隣で聞いてもいいかな?独りじゃ危ないよ?あと、お菓子ありがとう。届いたとき、泣いちゃうくらい嬉しかった。」
「い、いえ。ホントにそうなんだ。。こ、こんなに、、綺麗な方だったんですね、、。」
この女性、橘夕。25歳。
擬態していた地味女の桃子に助けられた恩があるが、今目の前にいるのは、圧倒的美人な素の桃子である。桃子は話し方こそオタクだか侍だかわからないような言葉を話すが、容姿は艶やかな黒髪をなびかせ、はっきりとした顔のパーツに見事な化粧を施している。和風美人と言ったところだ。そうまるで、、竹取物語のかぐや姫のモデルになったと言われる、木花咲弥姫命のように、、。自身も可愛らしい女性である夕でさえ、桃子の今の姿を見たら目が離せない。。
「私のことはあとでいいから、その涙のわけをどうぞ話して?貴方みたいなかわいい子がそんなに悲しそうな顔をしていたら、、放ってなどおけない。」
(だだだだれだぁ!私のかわいいかわいい夕ちゃんを泣かせたやつはっ!これは戦である!断固として許すまじっ!!おこ~(ꐦ°᷄д°᷅)!!!)
桃子は表向きは聖母と化して、静かに夕の座るベンチの隣に腰をかけると、そっと両手で夕の手を上から包んだ。そして壊れ物を扱うように、ゆっくりと夕の顔を覗き込む。
あまりの優しさに溢れたその一連の桃子の言動に、夕はまだでるのかというほど涙が溢れた。
そして、ゆっくりと、30分くらいだろか。自分が今置かれている状況を桃子に打ち明けたのだ。
「実は私、今日失恋したんです。告白してくれた人がいて、その時は驚いただけでした。でも、だんだんと、、好きだと気づいたときには、もう相手には別の彼女が出来ていて、、。
だけど諦めきれなくて、もしも、、私がもっと早くあの人の愛を受け入れていたらと思うと、、またあの人が私を選んでくれるのではないかとずっと思っていました。
でもとうとう、彼女と別れることはないと、、これ以上私が好意を伝え続けるなら、、き、嫌いに、、なるだろうって・・・。」
夕はそれでもまだ諦めきれず、その想い人と別れて自宅に戻る途中、まだ涙が止まらずにこうして夜の公園のベンチにいたのだという。
「そう、、。そんなに辛い状況だったとは。それなのにあんな、、酔っ払いにまで絡まれて、、さぞかし辛くっ・・・う、ううぅ!」
(ななな、なんてことだっ!このような美しい女性がっ!そんな目に遭うなんて・・・。くぅっ、、辛いっ、なぜもっと早く助けることが出来なかったっ!運命とはかのようにえげつないことをするものなのかっ・・・!!!!)
夕に同情した桃子は、無意識に転生前の母が泣く姿と重ねて、盛大に号泣してしまっていた。ついには過呼吸になりかけるほどに。。
「うっぐ、えっぐっ・・・っ!!つ、辛い、、なんでそんなことにっ・・・!!」嗚咽
「え、そ、そんな、も、桃子さんまでそんなに泣いたら、、私っ・・・え、ごめん大丈夫??ゆっくり息して??!!」困惑
夕は自分のために凄まじいほどに泣いてくれるその優しい人に、困惑した。だけど、心からすくわれる思いもあるので、しだいに安心して手を握られたまま気の済むまで泣いた。(通りすがりの人に警察を呼ばれる寸前だったことを二人は知らない。)
「ぐすっっ、ご、ごめんね、、慰めなければならないのに、、一緒に泣いてしまって・・・。それで、その会社に、その想い人といることを決めかねているのね?」
「はい、、。もうどうしていいかわからなくって。。」
「そうね、そうね、ああ、どうしようどうしたらどうなるのっ!!」パニック
「ありがとう、、桃子さん、そんなに考えてくれて・・・。」
夕はなんと、自身が勤めている会社がその想い人の働く企業に吸収されることになり、あと少ししたらその人の下で働くことになるのだという。そして、これ以上その人のそばで自分が平気でいられるのかどうかと、決断できなくて悩んでいたというのだ。
「つまり、、夕ちゃんは、その人の下で働くことを選ばなければ、一度失業するってことだよね?」
「ま、まぁ、確かにそうです。だけど、そんなことよりかは私、あの人のそばにいたくて、でもそれは辛いことで、、。」
「そうだ!ねぇ!ちょっと私の家に来ない?計画を練りましょう!」
「え、、いいんですか?」
「ここから近いの。おいでおいで!私たちはもう友達よ!」
(いえ、お嬢様。私は貴方のメイドになりたい。)
こうして桃子は、涙のかわい子ちゃんを家に連れ帰るのだった。
過呼吸なりかけだったので、夕に手を引かれながら歩いた。
(フォーリーン、ラーブロマーンスノーカーミサー)
桃子、なんてラブコメ主人公の素質のある子。
続く。
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