第10話 神展開もどんどん引き寄せちゃう桃子

 本日の桃子は意外と地味活動をしていた。


「うーん、屋上で主人公が寝ている・・・。と、そこへ現れたのは学校一の不良、、そして美少女の・・・気づかずにつまづく、、そして、そして、倒れた時に意図せずふれあってしまうくちび、る・・・!!ひゃぁん♡ と、ここまでは王道。。しかしながらそれではつまらぬ。。ここで思わず身体を支えた手が掴んだのは、、主人公の胸、、いやそれではつまらぬ、、そうだ、、なにかこう、、どっひゃぁ~!みたいな、、んっとんっと、、おでん?熱々の・・・!?」


 人気百合作家の桃子。新作を描き上げていた。

 桃子は決して誰かの言いなりには描きたくないので、同人界に棲みついていた。ところが人気があまりにもスゴく、SNS上にはピーチ@顔バレごめんなすってに関連するタグが溢れていた。


「う、うーん。疲れたぁ。そろそろ休憩するであります。・・・お?真央氏からメッセージじゃございませんか♡えっと、なになに?今日、晴と遊びに行ってもいいですか?ですとっ!!?な、な、なんてご褒美がここで!!

 うんうんっ、キテキテ♡あの二人に屋上を再現してもらえるでござる!!あ、そうだ!制服のまま来てね♡おっしゃ、送った!ぐふっ♡捗ること間違いなし~!」


 では、準備いたしませう( ੭•͈ω•͈)੭


 晴と真央の学校が終わってしばらく後。


真央「こんにちは~?も、桃子さぁん?玄関開いてるから入ってって言ってたから来たよ~?」

晴「おじゃましまーす。私もお邪魔してすみません~!」


桃子「あん♡待ってたぁ♡どうぞ、リビングまで入って~?」


真央「っていうか、、ここ、すっごい広い、、家賃高そう・・・。」

晴「有名な漫画家なんでしょ?百合の・・・。」

真央「うん。ずっと大好きで読んでた漫画の作者さんだったの、。」


 中へと二人が進むと、薄いピンク色のエプロンをした桃子がアフタヌーンティーの準備をしていた。3段にならべられた焼き菓子達、、そしてテーブルにそろえられたハーブティーの茶葉。


真央「わ、わぁ・・・・・・。す、すごっ!」

桃子「待ちわびておりました。どうぞこちらにおかけ下さい、お嬢様。」

晴「め、メイド??」

桃子「どうぞ。ゆっくりくつろいでらしてね♡」

真央「あ、ありがとう、桃子さん。。それにしても、、豪華な家ですね、、さすが有名人、、。」

桃子「あら、そんな、、ちょっと漫画が売れて動画収益があってラジオDJなだけよ。あとはただの株主なの私なんて。。」

晴「ちょ、超人・・・。」

真央「なんでバイトしてるの、、、。」

桃子「あそこがエルフの森だからよ♡」


 さぁ。お主達。存分にその力発揮せよ・・・。誰もいないと思え。いちゃいちゃするのだ。いいか、ここは屋上である。おでんは用意してあるわ・・・。


 今度から、定期的に貴方たちのお友達も、、二人ずつ、、連れてきていいからね♡

 最高のおもてなしをさせていただくわ・・・。


 桃子、一切やましい気持ちなく、ただ百合を眺めたかった。


真央「わ。このハーブティーおいしい♡晴もちょっと飲んでみる?」

晴「う、うん。あとこのフィナンシェもすごい。真央、ほら、あーん」

真央「あーん、、わぁ、美味しい!」


 くぅぅぅぅ!!なんでもいちゃいちゃの材料にしおってからに♡真央たん、、やっぱりかわいい。。ほっぺ、マシュマロみたい。晴ちゃん、、クール系かと思ってたけど、割とデレなのね♡この二人、、どこまでいってるのかしら、、聞きたい聞けない聞きません聞けませんっ!!!苦悶


真央「あのね、桃子さん。晴は桃子さんの漫画を見たことがないの。私はずーっと読んでたけど。」

桃子「あら。じゃあ是非、最近の作品をいくつか差し上げるわ♡」

真央「やったね!サインしてね?真央にも、真央ちゃんへって書いて?」

桃子「う、上目遣いと甘えた声をっっっ!!あ、ありがとうございます!ありがとうございます!!」


 桃子、さらに性命力をアップさせた極楽な1日だった。


 夜になり、未成年である二人はそろそろお互いの家に帰さねばならない。仕方なく、泣く泣く桃子は、二人を人通りのあるところまでと送っていくのであった。


(いっそのこと、、二人とも養女にして三人で暮らしたい・・・。)


 新たな願いを胸に、桃子は二人と手を振って別れた。


「ああ~!なんていい1日だったことか。。もう胸がいっぱいで、、動画はお休みにしちゃおうかしら。。」


 なんて歩いていると、通りがかった公園のベンチに女性の人影があることに気づく。


「え、この時間に女性一人は危ないんじゃ、、私、近くで見守り地蔵になろうかしら、、。」

 そう考えて、桃子は声をかけるわけでもなく近くへとにじり寄った。

「あ、あれ?な、泣いてるかな?ね、眠いのかな?どっちかな?」

 判断がつかずに、気づくとかなり近くに寄ってしまっていた不審者桃子。

「あ、泣き声だな、、これ確定だな?え、どうしよう、こういうとき百乃様とか森島様ならどういう流れに・・・?!」


 と、とりあえず、、


「あの、大丈夫ですか?」


 なんのひねりもなかったが、仕方ないでしょ。。


「えっと、この時間に一人は危ないよ?」


 ナンパじゃないからね?今の私は聖母、そう、聖母になりきるっ!


「あ、すみません、、大丈夫ですから・・・。ご心配なく・・・・」


 え、ん?あれ?こ、この、、このご尊顔は、、まさかっ!!


「あ、あ、ああああっ!!た、橘さんっ?」(夕ちゃぁぁぁんっ!!!♡)




 ゑゑゑゑゑゑゑ・・・・・・な神展開であった。



 続く。


(アーノーヒアーノートキーアーノバーショーデー)

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