第3話 メイド長桃子、お仕えすべきお嬢様を見つける

「はぁ、、解雇されてしまったでござる(´Д⊂グスン」


 本日、桃子は百合摂取のために潜入していた会社を解雇された。有給の消化がまったくされていなかったため、あと1週間の間に引き継ぎをしたら会社には来なくていいと言われてしまった。


「あーあー。もうあの百合カップルや、、隣の部署のクール系美人とか、、会えなくなるのかなぁ~。」


 三つ編みのまま、しょぼくれて帰りの電車に乗る桃子。いつもなら電車女になるために、2,3つ車両を見回りして、好みの女性のそばで悪漢から守る妄想をしているのだが、。しかし、願望は手放したときに叶うものである。


「ちょっと、やめ、やめてくださいっ!!」

 声がする方を桃子が振り向くと、泥酔した男に絡まれる女性、、あり?あああ、あり?


 「ふわぁぁぁぁぁぁ!!めちゃくちゃ好みのかわい子ちゃんであるーっ!」


 た、助けねば。な、なんのために今まで!鍛え上げたと思ってるんだ!桃子!


 桃子はこどもの頃からなぜか剣道がしたかった。とにかく竹刀を振りたかった。試合になるとなぜか「母のために~!!」と涙を流し出すので桃子の母は桃子の熱意に打たれ同じく泣いた。がしかし、殺気迫る桃子に同年代のこどもが怯えたため、小学校高学年になると道場を辞めさせられてしまった。つまり、それほど強くはない。


「ぐぬぬ、、か、勝てる気がしない・・・。無念。。かくなる上は智慧を使うでござるっ!」


 桃子は果敢に飛び出して、絡まれる女性の手首をつかみに行った。


「お嬢様!いけません!だから一人で電車になど乗ってはいけませんと言ったではございませんか!!」


 桃子はお嬢様のメイド設定をわずか2秒で完成させていた。


お嬢様「え、?」

悪漢「なんだよ、邪魔だな!」

メイド長桃子「これ!そこの悪漢。この方に何かすれば日本の警察はおろか、政治家までが動きますよ?立ち去りなさい!」

悪漢「何言ってんだお前・・・この眼鏡女はっ!」


 悪漢がメイド長を片手で押そうとしたときだった。


「おい!お前、なにやってる!」


 桃子は強運だった。その声に振り向けば、「全日本強い人ズ」と書かれたTシャツを着た大柄の男達が悪漢の身体をすぐさま締め上げていたのだ。


「おい、お前は警察に突き出すからな!」


「おあああああっ!焦ったでござる!なんか、なんか、もうすぐ死ぬかもと思ったら謎のトラウマがすげーよみがえったでござる~!」


 桃子は半泣きのまま、電車が止まると関係者一同と警察の聴取を受けることになった。


 聴取後。


お嬢様「あの、助けようとしてくれて、、ありがとうございました。」

メイド長「なにをおっしゃいますか。助けるのは当然のことでございます。」

お嬢様「優しいんですね・・・。あの、お名前とご連絡先を、、お礼がしたいので。」

メイド長「ふ、フラグ・・・。ついにきた、、フラグがっ・・・!!」


 桃子は副業の名刺を渡した。


 そして、お嬢様、、もとい、めちゃくちゃタイプのかわいこちゃんと手を振ってその場は別れたのだった。


 なんて強運な子。



 

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