第49話 説明
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逆茂木内にいる兵隊に人が入れるようバリケード台車を若干開けさせると歩哨の一人が駐屯地内のどこかへ走って行った。副団長に報告に行くのだろう。
歩哨が戻ってくるまで、ぼくは駐屯地の外で待たされた。雑談は特にない。
戻って来た歩哨と入れ替わりに台車近くの兵隊数人に見張られながら、ぼくは駐屯地内の司令部棟にある打ち合わせ用の小部屋に案内された。
司令部といっても、もちろん仮設建築物だ。
柱と壁や屋根をパーツごとに分解して運搬できる。
司令部だから特別に良い建物というわけではなく流用して使いまわせるようにパーツは駐屯地内のどの建築物でも共通だ。
駐屯地内に入る際に、ぼくは剣を取り上げられた。
帰りに歩哨に声をかけて返してもらう仕組みだ。
以前訪れた際にはそのような扱いは受けなかった。
もしそうであれば、ぼくは、ぼくの剣を手元から離すことになっていたのでノルマルたちに頼んで、ぼくだけは依頼に参加せずに留守番をしていただろう。
前回は相手からの依頼で駐屯地を訪れたのだ。
一応、探索者ギルドから推薦された探索者という扱いであったので武器を取り上げられることもなく、そのまま駐屯地内に案内されていた。もっとも所詮はDランクパーティーだったので武器を取り上げなかったとしても兵団側からすると脅威でも何でもなかっただろうけれども。
今回は相手からの依頼ではなく、ぼくが一方的に押しかけた形だ。
ぼくとしては兵団に対して重要な情報を持ってきたつもりだったけれども相手からすれば突然やってきて副団長に会わせろと言っている胡散臭い探索者以外の何者でもない。
ましてやFランク。そりゃ、武器くらい取り上げるだろう。
もっともFランク探索者如き例え武器を持たせたままであったとしても一瞬で武装解除ぐらいできるだろうけれど。
いずれにしても、ぼくはジョシカからもらった新しい愛剣を歩哨に預けた。
以前のぼくなら絶対に手元から剣を放すような真似は受け入れられなかったけれども今にして思えばなぜそうであったのかが逆に分からない。多分、心に余裕がなかったんだ。
ぼくが部屋に入るとすぐ、見覚えのある顔の副団長が入って来た。まだ、三十代だろう。
部下の兵隊が一人付き従っていた。こちらは二十代だと思う。
ぼくを、ここまで連れてきてくれた台車担当の兵隊たちが入れ替わりに去っていく。
副団長が口を開いた。
「『同期集団』というと確か昨年、指導講習に来てくれたのだったな?」
「はい。その後、鼠の発生はどうですか?」
「減っては来ているが種類が入れ替わってきている。最近は大口より小口が多そうだ。」
駐屯地周辺は訓練のため内外に塹壕が張り巡らされている。
その塹壕にネズミ型の魔物が多数住み着いて大量増殖してしまったため効果的な駆除方法の指導を探索者ギルドが依頼された。その結果、派遣されたのが『同期集団』だ。
ぼくたちは
ちなみに大口はラージマウスラット。小口はスモールマウスラットの通称だ。
「ああ、小口の方が適応能力がありますからね」
「そんなことよりオークの話だ」
副隊長は雑談は終わりとばかりに話題を変えた。
「具体的な崩落の場所はわかるか?」
部下が打ち合わせ室中央のテーブルに地図を広げた。
『
「ここですね」
ぼくは迷わずに『
部下がピンを刺した。
現地でアルティア兵の地図を見せられていたから、すぐわかる。アルティア兵の地図にはオーク集落の位置がマーキングされていた。
「大体、百メートルぐらいの長さで崩落しています。急斜面ですが這うような体勢をとれば上れると思います。誰かが上ってロープを垂らせば。さらに簡単です」
「その下にアルティア兵が集まっているのか?」
「そもそもは崩れた崖の下に既にオークが大きな集落をつくっていました。アルティア兵はオーク集落を殲滅したばかりらしく山のように積まれたオークが燃やされていました。アルティア兵は集落の建物を直して、また使おうとしているようでした」
「なぜアルティア兵が侵略してくると思った?」
「正直、侵略してくるかはわかりませんが『
「ギルドに報告するのではなく直接ここへ来た理由は?」
「ぼくの想像どおりだとしたら緊急事態です。ギルド経由より直接話した方が早いですから。ギルドで確認をする手間が入る間に手遅れになってしまうかも知れません」
ぼくは地図上で指を動かしオーク集落からギルドのある町を経て駐屯地まで至る距離と直接駐屯地へ至るまでの距離を比較して見せた。
「なぜ、一人でそんな場所にいた?」
「このあたりで」と、ぼくは地図の一点を指さした。
「パーティーで探索をしていたのですがオークジェネラルが出現してパーティーが壊滅しました。
ぼくは仲間とはぐれて次から次へと別のオークが現れるので何日も必死に逃げている内に迷子になりました。
すっかり逆の方向に向かっていたことにも気づかず『
そのすぐ後に崖の崩落とアルティア兵を発見しました」
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