第32話 決死隊
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バッシュとの最後の食事後、二手に分かれて間引きに出たマリアはルンと『
オーク集落を見下ろす場所ではなく、少し外れた単純に断崖絶壁になった場所だ。
マリアが隣国側を出発する前に『
仮に集落から崖上を見上げたところで見えない位置にあたる。
マリアとルンは崖下の森を見下ろした。
姿は見えないが森には約千名の『
昼夜を問わずオーク集落の様子を窺っているはずだ。
食事をしている間に辺りは明かりによる合図を送るために十分なほど暗くなっていた。
星があるので空は明るい藍色だったが見下ろす森は墨で塗りつぶしたように漆黒だ。
マリアはルンに松明に火をつけるよう指示を出した。
ルンが着火した松明を森に見せつけるように大きく振って少しの時間待つ。
森に変化はない。
また松明を大きく振って少しの時間待つ。
森に変化はない。
何度か繰り返すと森の一角から一瞬だけ光が届いた。
ルンが再度松明を振った。
また一瞬だけ光が届いた。
松明ではなくカンテラによる指向性の信号灯の光だ。
光は森から崖上のマリアたちに対してのみ直線で届けられオーク集落に漏れた光が見咎められる恐れはない。
『
もう一つ意味がある。
明朝の作戦開始を承知した旨の了承だ。
マリアがバッシュに話していた作戦は持久戦だったが実際に『
表側からの力押しは不可能と判断したため集落内の様子の確認と場合によっては背後からの侵入を念頭に置いてマリアたち少数精鋭チームはこの場に来ていた。
単に表から力づくで突入を試みたのではクライアントと同じ結果になるだけだろう。
依頼を受けた以上、最終的には突入しないわけにはいかないが、もし内側から誰かが手引きを出来るのであれば突入時の無駄な犠牲を減らせるに違いない。
ただし、手引きの役割を担った者は代わりに犠牲となる可能性が高かった。
要するに決死隊だ。
だとしても、生き残れる確率が高い者としてマリアは自分を含む少数精鋭チームを選抜していた。
精鋭チームでオーク集落を裏側から実際に覗いて少なくとも表からの力押しのみより犠牲を抑えられそうであれば決行する。
決行は夜明け前を予定し決行前夜に『
そのような段取りになっていた。
ルンが送った松明による合図がそれである。
本隊側は精鋭チームが、いつ到着して決行の判断をしても対応できるように準備ができている。
バッシュがキャンプで囮役として普通に眠っている中、崖の上下で作戦決行のタイミングを共有したマリアたち四人は覚悟を固めながら一晩を過ごした。
夜明け前に集落へ降りる急斜面の手前に集合した。
マリアたちはバッシュにオークジェネラルの装備を見繕う際、あわせて自分たちのためにもオークの外套を確保していた。
装備の上からオークの外套を羽織って遠目には増員として駆けつけたオークであるかのように偽装する。
同時に、やはりオークから奪ったフルフェイスのヘルメットとフードを被った。
吐き気がするような臭いだが、しばらくの辛抱だ。
マリアのみフルフェイスのヘルメットではなく顔の上半分のみが隠れる兜だった。
そうすればオーク由来の顎が出る。
顎を見られれば、むしろオークだと思われるのに違いない。そういう顔立ちだ。
見張りに手助けに来たオークだと判断させ中に入ろうという作戦だった。
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