第13話 捜索

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『同期集団』はスレイス隊の魔法職の案内で現場に向かった。


 他にも手が空いている探索者やギルドマスターも一緒だ。


 もともとオークジェネラルが出た現地を確認する予定であったライネット氏も同行している。


 今回、バッシュたちがオークジェネラルと遭遇した現場は『同期集団』が先日ジェネラルと遭遇した現場と距離が近かった。


 単なる森の中の一角だがジェネラルたちにとって何らかの意味がある場所なのか?


 ますます現地確認が必要だ。


 まさかバッシュも、そう頻繁にオークジェネラルが現れるなどとは思いもしなかったのだろう。


 だからこそ、単純にいつもの探索ルートにスレイス隊を案内したのに違いない。


 そんな危険地帯だと思っていれば避けたはずだ。


 スレイス隊とバッシュが別れた場所に全員が着いた頃には日が暮れかけていた。


 森の中のため辺りは暗かったがオークジェネラルと共に現れスレイスたちが倒したオークアーチャーの死体が転がったままだった。


 だから、場所に間違いはない。


 松明に火を灯してから横一列となり囮になったバッシュが向かったという方角へ、お互いに間隔を空けながら歩いて捜索する。


 この場所までの道中、ノルマル、ミトン、ジェイジェイはギルドマスターに宣言した。


「これは俺たち三人の総意だが、もしバッシュに万が一のことがあった場合は俺たちは拠点とするギルドを移らせてもらう」


 実際に告げたのは『同期集団』のリーダーであるノルマルだ。


 所属している探索者たちのランクや探索の成果の良し悪しは各街のギルドの代表であるギルドマスターの成績に反映される。


 逆に愛想をつかして優秀な探索者に他のギルドへ移られるなどという事態はギルドマスターとして失格のレッテルを貼られたにも等しい。


 将来を期待される『同期集団』に自分が理由で移籍される事態はギルドマスターにとって致命的だ。


「待て。『同期集団』からバッシュくんのようなお荷物がいなくなればAランク入りも夢ではないのだぞ。私は規則でパーティにとって戦力外と思しき探索者には除隊の勧奨と意思確認をしなければならないのだ」


「俺たちは、バッシュに除隊の勧奨をするな、と伝えていたはずだ。にもかかわらず、わざわざ俺たちがいない状況を作ってその隙に面談をするなんて悪意しか感じない」


 攻撃力こそ足りていないが、うまくバッシュが獲物を引きつけるような戦闘をしてくれたから、これまで『同期集団』は生き残ってこられたのだ。


 内部の人間にしかわからない話だが『同期集団』の活躍は、むしろバッシュありきと言ってもいい。


 バッシュののらりくらりは、それほどの逸品だ。


 ランクが上がる上がらないはたまたまであり、そもそも端末が判断する話だ。


 人間による評価ではない。


 ランクが何だ。


 ランクなんか低くても一緒に探索をしたい奴がいる。


 そもそもの話としてノルマルたちはバッシュをお荷物などと思ったことは一度もなかった。


 ニャイがバッシュにも話をしたとおりだ。


 ノルマルたちはバッシュ本人に価値を見出し、ギルドマスターは探索者ランクに価値を見出す。


 大方、自分のギルドに所属する新米探索者をAランク探索者まで育てあげた名ギルドマスターとして高名になりたかった、とかそんなところだろう。


 その結果、当の探索者たちとの信頼関係を失ってしまっては本末転倒だ。


「バッシュくんに万が一のことがなければ当ギルドに残ってくれるのだな?」


「それはバッシュ次第だ」


 ノルマルは素気無く突き放した。


 幸い、近くには聞き耳を立てている他ギルドのギルドマスター、ライネット氏がいる。


 バッシュが現ギルドを離れたがらない可能性はニャイだが、ニャイごと受け入れてもらえないか相談する手もあった。多分、承知してもらえるだろう。


 そんなやりとりを頭に置きながらノルマルたちは捜索をしていた。


 とはいえ、実際のところバッシュが無事であるとは誰も思っていない。


 もちろん、無事であってほしいとは思っている。


 だが、現実は非情だ。


 Fランク探索者が一対一でオークジェネラルに追われて逃げきれるとは思えなかった。


 救出に来たと言いつつ、実際には遺体の回収となる可能性が高いと思っていた。


 大勢で来たのは、まだ付近にオークジェネラルがいる可能性を考えてだ。


 オークジェネラルの適正探索者パーティー・・・・・ランクはCである。


 もともと一対多でなければ不適当な相手だ。


 捜索にはニャイも参加したがったがノルマルは認めなかった。


 うまく相手を巻いたバッシュがギルドに戻ってくるかもしれないから、という口実を考えた。


 ギルドには他にも職員がいるためニャイが待つ必要はどこにもなかったが捜索に同行させると無残な状態のバッシュをニャイが目撃してしまう可能性が高いとノルマルたち『同期集団』は考えた。


 それはバッシュが望まないはずだ。


 居ても立っても居られない状況で、ただギルドで吉報を待っているだけというのはニャイにとって拷問と同じだろう。しかも吉報の可能性は低いのだ。


 それでもニャイは連れて行けない。


 自分が置いて行かれると決定したニャイはギルドマスターに呟いた。


「バッシュさんに何かあったら一生恨みます」


 やはりニャイごと『同期集団』をライネット氏のギルドに受け入れてもらう方向だ。


 その時、横並びで捜索をする探索者たちの一角から声が上がった。


「誰か倒れているぞ」

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