公爵家の赤髪の美姫は隣国王子に溺愛される

第23話 愛の結末

クラウに深く口付けをされ、ミアはクラクラとした。

甘く激しく唇を奪われ、抵抗などできるはずがない。

「結婚式の前に手は出さないと決めていたんだがな……」

そう呟きながらミアを抱えると、隣の寝室へと向かい、ベッドにそっと降ろす。

「クラウ様……」

「もう味見だけでは足りないようだ」

「でも結婚式前はダメって……」

「そう言われただけで、正式な決まりなどない。そもそも愛する人が側にいるのに何もするななんて無理な話だろう？」

愛する人という甘美な響きにミアはぞくぞくとする。

自分の上から見下ろすクラウは色気に満ちていて男らしい色香で誘ってくる。

抗えるはずなどなかった。

大人しく受け入れるミアに、クラウはゆっくりと触れていく。

ドキドキと心臓の音が聞こえてしまうくらいに胸がうるさい。ドキドキしすぎて苦しいくらいだ。

顔も真っ赤で体も熱い。

クラウに見つめられるだけで、体から火を噴きそうだった。

「んっ……、クラウ様……」

素肌に触れられるだけで自然と甘い声がでる。

体中にキスをされるだけで背中がのけぞってしまう。

服を脱いだクラウ様の体は筋肉質で引き締まっていた。

ところどころ傷があるのは剣による切り傷だろう。

そのひとつひとつに触れると、クラウはたまらなそうに熱い息を吐いた。

「愛している、ミア」

「私も愛しています」

素肌でピッタリと抱き合うと一つに溶けてしまいそうだった。

愛する人と結ばれるということが、こんなにも心地よいものだとミアは初めて知った。

――――

結婚式当日。

どどうの準備が終わり、ついに結婚式を無事に迎えることができた。

今日は国をあげてお祭り騒ぎだ。

ミアは王妃を助けた一件以降、周りの目が変わり、またカラスタンドの血を引いているとおやけにされたことで反対派は減っていっていた。

支度室で白いウェディングドレスに身を包んだミアは緊張していた。

「大変お美しいです。ミア様」

後ろに控えていたハザンが微笑む。

「ハザンさんこそ。今日は凄くカッコいい。女性でそう言う格好が似合うなんて素敵だわ」

「ありがとうございます」

ハザンは王族警備隊の式典制服を着ていた。

かしこまったビシッとした服装はハザンによく似合っており、支度を手伝ってくれた侍女たちが見惚れていた。

「お腹、苦しくないですか？」

「大丈夫です」

ミアはそっとお腹に手を当てた。

あれからこの式までに逢瀬を重ねた二人に子供ができていた。

「式に影響があると困るから結婚式まで我慢しなさいと言っていたのに！」

クラウは王と王妃にはそう言って叱られた。

ミアも軽く叱られたが、喜ばれる方が大きかった。

王も王妃もミアを気に入っており、断然甘いのだ。

式の妃は体調を見て、ひと月前倒しになった。

つわりもおさまり、お腹もさほど目立たないこの時にやろうという話になったのだ。

ドレスはお腹を締め付けない、フワッとした豪勢なドレスだ。

そして王宮の隣にある王立教会で式を挙げた。

王宮のテラスから外に出た時は集まった国民から大きな歓声が上がった。

赤い髪の美しい王子妃殿下を一目見ようと国中から集まっていたのだ。

また、ミアの生い立ちにも国民は同情してさらに親近感を寄せていた。

カラスタンドの血を引く異国の赤髪の美女。

母を亡くし公爵家の父に引き取られるも、不遇な扱いを受ける。

愛を育ててそこから救い出したクラウ王子。

そんな噂も流れていた。

ミアの方に親族がだれ一人招待されていないことがさらに噂を加速させる。

「本当に呼ばなくてよかったのか？」

式の後のパーティーの時にクラウに聞かれたがミアは大きく頷いた。

実は事前に母国のレスカルト家から手紙が届いていた。

内容は結婚の祝福と、結婚式には是非とも招待してほしいという内容だった。

「私にはクラウ様王家以外、家族などおりません」

そう言って返事すら書かなかった。

クラウもミアの意思を尊重してくれたのだ。

その後、噂で聞いた話だが……。

クラウは世間話として招待したミアの祖国王にその話をした。

「なんですって⁉　そんなことが……」

祖国王はレスカルト家の行いを恥とし、領地をはく奪、郊外の辺境地へと追いやったという。

以降、二度とレスカルト家がミアに連絡をよこすようなことはなくなった。

そして一年後。

赤茶色の綺麗な髪の王子が誕生した。

その二年後にはミアによく似た美しい姫が誕生したのだ。

クラウは数年後、カラスタンド国王になる。

王妃はもちろん、赤い髪をした美しい美姫であった。

END