第2話 人間チーム

 わけが分からずただ言葉を読み上げると、ぴろんと陽気な音がなり、画面が切り替わった。手紙のようなデザインの画面に、ゴシック体の可愛らしい文字が浮かび上がっていく。


『新規ゲーム参加、おめでとうございます~。あなたは今日から、嘘つきゲーム、通称「嘘ゲー」の参加者となって頂きます♪』

「嘘ゲー……? なんだよそれ」

『質問は受け付けておりません~。てかこれから説明しようとしてるんだから黙れクズ☆』

「!?」


 何気なくつぶやいた言葉に、画面が反応した。目を見開く。するとすぐさま『そんなに驚かないでくださいよ~。照れちゃいます~(テレテレ』と表示された。なんだか腹が立つ言い草だ。


『嘘ゲーでは、合計ポイント100を目指して、三日に一度、嘘つきゲームに参加していただきます♪ このゲームでは悪魔チームと人間チームに別れて、殺し合いの戦闘を行って頂きます(^^♪) あ、でも、すぐに生き返るのでご心配なく~』

「殺し合い……? 生き返る……?」

『悪魔チームは、悪魔さん同士で誰が悪魔さんだか分かります♪ だから協力して頑張ってね☆ 人間チームは、だれが人間か分かりません((でも、特殊な能力があるので頑張ってね♪))』

「は?」


『さてさて、とりあえず新規ゲーム参加者さん、あなたのHN(ハンドルネーム)を授けます。あなたのHNは「青鴉(あおからす)」。ゲーム登録完了です(^^ゞ

さて、今日のあなたの参加チームは――でるるるるるる~~~ 人間チーム! といっても、初参加者の方は絶対人間チームなんだけどね~。

そして、ゲームの舞台は――でるるるるるるるる~~~ 町田駅内! 町田の駅から外は戦闘範囲外だから、戦っちゃだめだよ? 出たらブザー警告がなりますので十秒以内に範囲内に戻ってくだしあ! ではではグッジョブ!』


 ぷつん、と小さな女の子の声(『りりりりりん!』と同じ声のようだ)が聞こえて、画面が落ちた。画面を再びつけようとボタンを押すと、パスワードの入力画面が出てきた。壁紙は例の、悪魔のイラストである。適当にパスワードを打ち込んでみたが、当然のように反応はない。途方にくれた僕は、再び背後を振り返った。


 相変わらず――蝋人形たちが飾られている。人が動かない町田の駅は、巨大なパノラマの中に迷い込んだようで、背筋に言いようのない悪寒が走った。


「……いったい、どうしろって……」


 僕は呆然と立ち尽くしていた。しかし、状況は変わらない。気が狂いそうなほど静かな駅に、のしかかるような重圧を与えられるだけだ。すがるような気持ちで、携帯電話を取り出した。嘘ゲーのスタートを宣言した黒い携帯電話ではない。もともとの持ち物である、青いカバーのスマートフォンだ。ボタンを押すと、どうやら正常に使えるようだった。いつもどおりにパスを入れ開くと、アプリにメッセージが入っていた。雛乃からだった。


『いま着いた! 待ち合わせ場所に行くねっ』


 そんな言葉と、くまのスタンプが一つ届いていた。

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