第7話 タイマーの能力
私はステータスを表示させ、アイリスに本当の能力を見せてみた。
『はわわわ! またぁ何ですかぁぁぁ、このスキルゥゥゥ!!!』
驚愕するフェアリーこと正体は導きの女神。
私はフッと口端を微かに吊り上げた。
勇者ミオ
【ユニークスキル】
《
〔能力内容〕
・相手や物質に触れることで時間を奪い10秒間停止状態にする。
・増加と増幅機能があり、触れ合ったモノ同士を連動させて同時に時間停止させることができる。
・連動して時間停止させた場合、それだけ効果秒数は個体数により10秒間ずつ延長することができる。
(例:10人の時間を停止させた場合×10で100秒。100人同時の場合は約16分)
〔弱点〕
・別のユニークスキルの効果及び既に影響を受けている物質の時間は奪えない。
・再び時間を奪う際はもう一度触れる必要がある。
・能力者の所持する物質は連動の対象外となる(武器・眷属も該当)。
〔補足〕
・レベルが上がる度に進化していく未発達なスキル。
・
「抜群に汎用性が高いわ。特に連動性があるのは凄く使える。さっき言った通り戦い方によっては四バカ勇者達が束になっても私には勝てないでしょうね。しかもレベルが上がれば進化するみたいだし……」
『さらに最初からレベル10で、あの
「そっ。認めるのは癪だけど、マーボが言う通り攻撃力を上げる必要があるわ。まずは《タイマー》を試してから武器の調達ね」
『試す? どうするつもりですか?』
「城の兵士から聞いたけど、王都から外れた森に低レベルだけどモンスターが現れるらしいわ。そいつら相手に試してみるのよ」
『素手で? せめて装備くらい揃えてからでも……』
「生憎、軍資金はこれしか貰ってないからね……ムカつくけど慎重に選ぶ必要があるわ。それにモンスターを斃せばお金になるんでしょ?」
『はい。換金はギルドで可能です。美桜さんは勇者なのでギルド登録が不要でしょう』
「了解したわ。やっぱアドバイザーがいるといないとでは違うわね。いちいち気を遣って見知らぬ他人に聞く手間が省けるわ」
『……あのぅ、一応は女神なので見知らぬ他人より気を遣ってください。てか、少しは敬ってくださいね!』
うっさいわね。
駄女神のあんたが誤認したせいで、私が異世界に転移されたってこと忘れないでよ!
こうして私はモンスターが出現する森に向かった。
一歩足を踏み入れただけで、あっという間に囲まれてしまう。
頭部に一角の角が生えた兎モンスター、「ヘイナス・ラビット」が5匹。
大きなゼリーのように半透明で体をプルンとさせている、「スライム」が4匹。
思ったより数が多いが、どれもレベル値2~3と低い。
攻撃力と防御力も一桁から20あればいい方だ。
ヘイナス・ラビットの毒性さえ気をつければいいようね。
「それじゃ初陣と行きましょう!」
初めて見る異形の姿をした怪物達を前にしても、私は臆することなく突撃した。
オタクの真乙と一緒になって、異世界モノのラノベやアニメなどを見ているうちに耐性が身に着いたのだろうか。
アイリスから聞いた話によると、以前より密かに日本政府とウィンウィンの協力が築けている。なんでも丁度、オタク文化が流行ってきた時期からだとか。
そういったサブカルチャーを繁栄させ、その手の知識を流行らせることで転生・転移者の即戦力として見立てているようだ。
特に伊能市は異世界と繋がる『
そうして『
「――まずは一匹ね、《怒りの鉄拳》!」
私は脳裏でムカつく四バカ勇者とヨハイン国王の顔を思い浮かべ技能スキルを発現する。
こちらの動きに、標的とするヘイナス・ラビットは反応することはできない。
「ブギャ!」
見事に拳撃はヒットし、その肉体は砕けるように散って斃された。
粉砕され消滅した地面に、菫青色に輝く小さな石が転がっている。
アイリスの説明だと『
にしても弱すぎるわね。
レベル差もあるけど、それだけじゃないわ。
私の攻撃:173だが称号の補正で+50の223と向上する。
さらに《怒りの鉄拳》は技能レベル向上する度にATK+10ずつ補正されるので《Lv.5》であれば、273の攻撃力となった。
当然、一桁台の防御力ではオーバーキルとなるだろう。
モンスター達の攻撃も俊敏かつ軽快な動きで躱し切る。
また差し障りない程度にあえて攻撃を受けてみたが、ほとんど体力(HP)は減少されてない。防御力も相当高いと評価した。
これもSBP:800を均等に振り分けた影響だ。
超人として覚醒したように身体能力が爆上がりしている。
「アビリティに関してはレベル上げと装備次第ってところかしら? 勇者はオールラウンダー職だっけ? 平均的に高数値でなんでもできる分、逆に特徴がないことが育成する上の悩みどころね。やはり剣を主体にして満遍なくレベリングすれば、いずれ魔法や技能スキルを習得していく感じかな」
『まさしくその通りですけど、まるでプロの傭兵並みに戦闘を熟知している方です。美桜さん、貴方は何者なのですか? 本当に女子高生なのでしょうか?』
「ごく普通の女子高生よ。ただ極度の負けず嫌いだけどね――!」
結局、9匹のモンスターを素手で斃してしまった。
これではユニークスキルが試せないわね。
仕方ないので、さらに奥へと進むと別のモンスターが現れる。
見た目はカピパラだが鋭い牙を持ち醜悪な容貌の巨大ネズミ、「ジャイアント・マウス」が7匹だ。
「どいつもレベル5~7、さっきのヘイナス・ラビットを一回り強くした感じね」
そう言ったと同時に私は疾走する。
一番先頭にジャイアント・マウスに接近し、右手を翳して触れた。
「――《タイマー》!」
刹那、ジャイアント・マウスの動きが止まる。
瞳孔も動かず、呼吸で揺らしていた体も微動すらしない。
頭部に半透明な時計の
完全に停止された状態であり、即ちこのモンスターの時間を奪ったことを意味していた。
時を奪ったジャイアント・マウスを《怒りの鉄拳》で撃破すると、残りの6匹が私の周りを取り囲み始める。
しかし私は一切動じない。
寧ろ実験には最適な状況だとほくそ笑む。
その場でしゃがみ込み、地面に向けて腕を伸ばした。
掌が触れたと同時にスキルを発動する。
「連動式の《タイマー》よ!」
地面に触れたことで、地面を媒介し《タイマー》の効果が増加される。
私を囲んでいたジャイアント・マウス達は一瞬で動を止めた。
「6匹同時に『刻』を奪ったから、60秒間は停止したままね――」
そう呟き、悠々とジャイアント・マウス達を斃していった。
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