第3話 私の存在
「あっ……」
鍵垢じゃなく、みんなに後悔された彼女のアカウントの一番新しい投稿。
見てしまった。
見つけてしまった。
車でキスをしていた人とのツーショット写真。
仲良さそうに頬をくっつけている。
「『マイダーリン』って。だっさ」
そう言いながらも、羨ましくって仕方がない。
彼女から全世界に向かって愛を伝えられている男の人が。
彼女に『普通』を与えれる男の人が。
「死にたい」
クソみたいな幸せを見せつけられて、悔しくってたまらない。
辛い、苦しい、悲しい、寂しい。
負の感情が頭の中で渦巻き、涙となって再び溢れ出す。
2人の写真が私に現実を突きつけた。
彼女の隣は、もう私の居場所じゃないんだと。
彼女と結ばれていたはずの赤い糸が切れたのだと。
私は彼女に幸せな未来を描いてあげられなかったんだと。
大学に入学して、文芸部で出会った先輩。
「初めまして。2年の井上
今まで一目惚れなんて信じていなかったけれど、初めて会った瞬間、恋に落ちてしまった。
「よろしくね。フウカちゃん」
「え、フウカって『楓花』なのね! 私の名前と同じ漢字が入ってるじゃない」
同じ漢字が名前に入ってるというだけで一番面倒を見てくれた先輩。
どんな駄作を書いても、
「楓花ちゃんなら大丈夫。完結させられるだけ凄いよ」
励ましてくれた先輩。
出会ってから数カ月、夏休みに2人で遊園地に行ったとき。
私の方から告白した。
先輩は、頬を赤らめて頷いてくれた。
純粋で
「今まで男性としか付き合ったことがないの」
と言いながらも、同性愛に対して特に偏見を持たず、私と一緒に歩む道を選んでくれた先輩。
「永遠に一緒にいられたらいいね」
恋人になって初めてお泊りをした日、私の右手の小指に左手の小指を絡めながら言ってくれた先輩。
その全てが、もう過去のものだ。
これから彼女の人生に、私は存在しない。
「うううううううううううううっ――」
スマホを放り投げ声をあげながら泣いていたけど、途中から声が出なくなって。
両手で顔を覆いながら涙に
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