第4話 区切り

 カーテンをちゃんと閉めていないせいで、隙間から差し込んできた朝日が眩しい。


 ムカつく。


 寝てないからイライラ度MAX。


 一晩中泣いてたし。


 最初は子どもみたいにわんわん泣いていたけど、途中から声は出なくなっていたから、多分近所迷惑にはなっていない。


 頭は痛い、瞼は腫れぼったいし。


 最悪な気分です。


 でも、散々泣いたらちょっと気持ちの整理ができた。


 未だに未練タラタラだけど、このままじゃいけないよね。


 ちゃんとケジメをつけなきゃいけない。


 どんなに嫌でも区切りをつけなきゃ。


 それが、私から先輩にできる最後の贈り物。


 幸せな未来を見せてあげられなかった、せめてもの償い。


 浮気は許せない。


 記念日に家に呼んでおいて、キスをしたことを許せるはずがない。


 それでもね、かえで先輩の隣にいるべきは私じゃないってわかったから。


 SNSの写真を見て漸く決心がついた。


 ここまでくるのに約2週間。


 遅かったよね。


 ごめん、先輩。


 責められるのを覚悟で私と向き合おうとしてくれる貴女に、応えようと思います。


 一言も返信していなかった彼女のメッセージに【話しましょう。明後日、先輩の家に行きます】と送信した。


 もしかしたら先輩は予定があるかもしれないけど、そんなの知るか。


 浮気されたんだもん。これぐらいのわがまま、いいでしょ。


「よしっ」


 布団から這い出して、久しぶりにカーテンを開ける。


 広がっているのは、ムカつくぐらいの晴天。


 夏らしい青空を見つめる。


 まだ動きたくも食欲もないけど、先輩に会う前に行きたい場所がある。


 私の心模様とは対照的な空から視線を逸らし、これまた久しぶりにクローゼットを開ける。


 あの日――告白をした日に来ていた服を引っ張り出して、のろのろとした動きで着替え始めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る