エピローグ メリーゴーランド
無駄に高い入園料を払って入ったのは、思い出の遊園地。
2年前の夏、先輩に告白をした遊園地。
恋人になってから時たま来ていたけれど、最近は予定が合わなくて来れてなかった。
平日なのであんまり人はいない。
にしても暑い。
腹が立つ。
2週間ぶりの外出がここになるとは思わなかったな。
今すぐ帰りたい気持ちを押さえ、真っすぐにメリーゴーランドに向かった。
誰も乗っていないメリーゴーランド。
あの夏、帰る前に告白して恋人になって。
キャーキャー言いながら一緒に乗ったメリーゴーランド。
最後に思い出が詰まったこれに乗って、愛に区切りをつけるんだ。
決意を固め、独りお馬さんに跨る。
ゆっくりと回っていく世界を見ながら考えるのは、やっぱり先輩のこと。
私たちは永遠に一緒だと思っていた。
女性同士だって幸せになれると思っていた。
約束してたのにね。
愛する人に裏切られた私の悲しみはグルグルと回り続けている。
まるで、メリーゴーランドのように。
けれど、もう悲しみにの渦に浮かんでいるのはうんざりだ。
朝まで散々ないはずなのに、気づけば涙が頬を伝っていた。
「あーあ」
最悪だ。
こんな炎天下の中来るんじゃなかった。
涙も世界も暑くって仕方がない。
「耐えろ、耐えろ」
口に出して自分に言い聞かせる。
楓先輩と向き合うために、必要なことだ。
グルグル渦巻く悲しみから抜け出せなきゃ、私は貴女と別れられない。
ずっと貴女の愛を引きずって生きていくなんて嫌だ。
なんて、強がり。
嘘つき。
本当はいつまでも貴女との思い出を、愛を抱えて生きていきたい。
少なくとも、次の愛に出会うまでは。
それぐらい許してよ。
変わってしまった世界の中で、一つぐらい変わらないものがあったっていいでしょ。
終わり
悲しきメリーゴーランド 佐久間清美 @kiyomi_sakuma
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます