第2話 普通と幸せ

 夜中に届いた彼女からのメッセージ。


 既読をつけたくなかったけれど、

「あっ」

 うっかり開いてしまった。


 仕方がないから目を通す。


「どうせ今まで通り、『話がしたい』で――」


 そう思ったけど、今回は長文だった。【本当は会って直接話をしたかったけれど、

私は彼と付き合います】


「は?」


 気づけば布団をはね退けて、スマホをジッと見つめていた。


 なにそれ。別れ話をすっ飛ばして、アイツと付き合うって?


「先輩って、こんなにも人の気持ちを踏みにじる人だっけ」


 違う。【私は、彼と普通の人生を歩んでいきます】だなんて、あからさまに私を傷つけるような内容を送る人じゃなかった。


 もっと優しくて思いやりが合って……あぁ、そっか。彼女にこんな文面を遅らせたのは私か。


 返信も電話にも出ないから、ストレートに内容を送りつけるしかなかった。


 文章は【ちゃんと会って話しましょう】と締めくくられていた。


 怒りが一瞬沸いたけれど長続きはせず。


 カラダ中から力が抜けて布団に寝っ転がる。


 天井を見つめていたら涙が溢れてきた。


「普通ってなんだよ……」


 左腕で瞼を押さえつけながら考える。


 私たちはそんなものクソくらえって言ってきたじゃん。


 私たちは間違ったことしてないって。恥ずかしくないって、言ってくれたじゃん。


「嘘つき」


 強引に涙を拭って、左手で握ったままだったスマホをいじり、彼女のSNSを開く。


 友だち、美味しそうな写真たちがアップされている中に、私の写真は1枚もない。

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