16話 修行4日目・午後 火の灯
---『ステータス』---
近代冒険者ギルド三大革命のうちのひとつと言われている技術。人間の身体能力を、レベル、HP、MPなど、主に8項目に分類し、その強さを数値で表現する。
数字で管理されているようで嫌だという人も少なくは無いが、この数値を分析・検討することで、ダンジョンに突入する際の適正レベルを判断できるようになったり、敵モンスターとの力量差を視覚的に確認できるようになったりした。結果、冒険者たちの生存率の大幅上昇に貢献できた。
しかしあくまで数字で表しただけの能力であり、実際にはその場のコンディションや数値化できない戦闘経験の差などもあるので、あくまで参考程度にするべきである……。
と、以前マリナさんから教えてもらったことがある。
「まあそうは言っても、魔法をあとどのくらい使用できるのかを実感するうえでは、己のステータスを知ることは重要じゃな。
特に魔素……MP管理が難しい初級者のうちは特に有効じゃ。
さて、メルティ殿のステータスは……ふむ、こんな感じじゃ」
水晶玉には数字が浮かび上がった。
レベル1、HPは8、MPは26。
他に、力は非常に低い、守りと体力はそれほどではないが低め。素早さは普通並み。賢さ……この場合は呪文の威力や制御力などの能力の事を言うが、そちらは高い。
「ふむ……やはり、典型的な魔法使いの数値に近いな」
クルスさんとオパールさんが後ろから覗き込む。
「とはいえ、スライム娘のメルティにとってほとんどのステータスは関係ないだろうな。HPとかすごく低いけど、メルティはコアさえ狙われなければ実質不死身だしな」
「力も守りも低いけど、まあ、柔らかいスライム娘だもんね。なんというか……ある意味納得という感じ」
二人ともコメントが優しい。私のステータスを見て、低い部分をフォローしてくれているようだ。
レベル1なので、周りのみんなと比べたら非常に低いはずだが、それでも、自分で見てもびっくりするくらい低い。
最弱モンスターと言われているスライムなのでこんなものなのか、あるいは自分の素質が元々この程度なのか……。
しかし、その中でも突出して見える数値が2つある。
「やはりMPと賢さは素晴らしいな。初級火炎魔法なら13回分。ワシが見てきた中でもトップ3に入るくらいの初期能力値じゃ」
ビビアンさんがそれを見て感心したように頷く。
「う~ん、メルティ、本当に魔法が使えなかったの?」
クルスさんの疑問に、私は首を振る。
「田舎の教会で神父さんが、生活魔法の講習会を開いてくれたことがあったんです。でも、私には取得できませんでした。神父さんの教え方が悪かったはずは無いですし……やっぱり、私には才能は無かったんだと思います」
生活魔法とは、戦闘用の魔法ほど強力ではないが、生活に役立つ程度の簡単な魔法の事。
当時私は薪にマッチ無しで火をつける方法を教わった。でも駄目だった。
生活魔法すらそんな感じだったので、もちろん魔法使いが使うような戦闘用魔法も無理だった。
初級火炎魔法は『魔法使い』のジョブマニュアルにレベル2に記載されているが、才能のある人ならレベル1で既に、むしろジョブに就く前から習得してしまっている場合が多いそうだ。もちろん私は使えない。
「なるほどな……やはりオパール殿の推測通り、種族特性で魔力が高いと考えるほうが妥当なのかものう……。
さて、次は他のメルティ殿の能力の魔素の消費量を調べてみようか」
例えば、さっき話に出たウィルオウィスプというモンスター。人魂みたいな形の姿を持たない霊体系のモンスターだ。
そのモンスターは、『生命吸収』という特技を持っている。こっちのHPを吸い取る攻撃だ。その時にMPを消費するらしい。
「……とまあ、このように、特定の特技で魔素を消費して発動させる魔物は多い。
メルティ殿の『硬化』の能力もその類例だと思われる。
じゃので、その消費量を調べてみたい。メルティ殿、お願いできるかな」
「はい……」
私は返事をし、体全体をゼリー状に『硬化』させる。そして再び水晶玉に手を当てる。
「……あれ、MP減ってないぞ?」
クルスさんがそれを見て声を上げる。確かに、MPは減っていない。
「ふうむ……ちょっと触れてもよいか?」
ビビアンさんが私の頭に手を触れる。
「ふうむ……ごく僅かにじゃが、魔素が減っておるな……」
「つまり、小数点以下の消費量って事?」
「うむ、オパール殿の表現が正しいじゃろう。MPで言うと0.3……いや、それ以下かのう。
さらに、僅かずつではあるが、魔素量が戻ってきているような気配もある。自己魔力回復能力もやはりあるようじゃ」
「じゃあ『硬化』能力は、あまり魔素消費量には気を使わなくていいって事だね」
クルスさんがそうまとめた。確かに、魔素を使い切ったら死んじゃうかもと言う話を聞いた後、いままでみたいに何気なしに『硬化』を使うのは、ちょっと怖かった。でも大丈夫そうだ。
「メルっちょは……いや、スライムは魔法生命体説が正しいとすると、日常的に魔素を微量ながら消費しているのかも……だから魔素回復能力がある……?人間が疲れた体を自然に自己治癒できるように、スライムは魔素を自己治癒できる……?ううむ……」
オパールさんが独り言のようにつぶやいた。
「さて、前置きはここまでにして、ここからが本題じゃな。
魔力の使い方の練習を始めようかのう……」
ビビアンさんはテーブルの上の水晶玉をぱっと消し、代わりに小さな小枝の束を出してきた。
「次は、実際に魔法を扱う練習じゃな。生活魔法の練習じゃ。
先程の話を聞く限り、一度やってみたことはあるらしいが、改めて説明させてもらおうかの。
この小枝を使って火を発現させる練習じゃ。まずはワシが一度手本を見せてみるぞ」
ビビアンさんは小枝を一本持ち、念じる。すると小枝の先端に火が灯った。
「とまあ、このようにじゃ。小枝の先に魔素を送り、それを火のエーテルに変え、火を灯す。
このフロギスの木の小枝は火のエーテル素と結合しやすい木材じゃから、魔素を送るだけでも火を発現させられるぞえ。さ、やってみなされ」
私は小枝を持ち、言われた通りに念じて魔素を送る。と言っても『魔素を送る』という事がよく分からなかったので、なんとなく、こうじゃないかと思ったものを念じてみる。
「う~ん、駄目です……」
「まあそう簡単には出来ぬな。何度かやり方を変えながらやってみて、自分なりのイメージを掴むのじゃ……どれ、ちょっと助けてやろう」
ビビアンさんが私の横に立ち、小枝を持っている手の上を掴み、そのまま小枝に火をつける。
「どうじゃ、魔素が流れる感覚か何か感じたか?」
「う~ん、感じた……ような、感じなかったような……」
ビビアンさんが同じように何度か同じようにやってみる。確かにちょっと不思議な感じはあるが……
その後一人で何度かやってみる。でもやっぱりうまくいかない。
クルスさんが横からひょいと顔を出し、同じく私の手を握り、
「俺がやるとこんな感じ」
と、同じようにやって見せてくれた。いきなり手を握られてちょっとだけドキッとした。
うん、ビビアンさんの時とはちょっと違うけど、不思議な感じはある。でもう~ん……。
オパールさんはカボチャの置物に腰掛けながら見ている。いつもの講義の時とは違ってちんぷんかんぷんと言う顔だ。
私には錬金術と魔法と、どこがどう違うのか分からないけど……。
「僕にはやっぱりよく分からないなあ……言葉で言うと、どういう感じ?」
「そうは言っても、イメージの掴み方は人それぞれだから、俺が変に言葉にして悪いイメージを持たせてもなあ……」
「ふーん、そういうもんなのか……あっでも、イメージ掴むために適当にアレコレ言うくらいならいい?」
「そのくらいならまあ良いじゃろう。
逆に魔法を知らないオパール殿の言葉のほうがいいインスピレーションを与える可能性もあるじゃろうし」
「じゃあ、ちょっとだけ。と言っても適当な事しか言えないけど……
えっと、メルっちょは普段の『硬化』の時、どんなイメージでやってるの?」
「うーんと、ゼリーになれって思いながらやってる感じでしょうか……」
「……そっか……」
でも、確かに、硬化もこれも同じ魔素を使うんだから、同じイメージで出来るのかな。
硬化の時は自分の体だから出来るけど、これは体の外だし……これが体だったら……。
あれ、でもこの枝も体の一部と考えたら出来るのかな。
枝も、私の体の一部だと思って、そこに何か変化を加えるイメージで……
ぷすん。
枝の先から何か音がした気がした。
「お?さすがはオパールだな。いいアドバイスだ」
「……どうも……?」
オパールさんは褒められはしたけど、どこか腑に落ちない表情。やっぱりどうも魔法の事は理解できない、とでも言いたげだ。
「何か反応があったようじゃな。その調子じゃぞ。もっとやってみなさい」
言われた通り、さっきのイメージ通り何とかやってみる。
最初は数回に1回と言う反応だったが、だんだんぷすんという感覚は何度も出るようになり、そしてらさらに数十回後には……。
ぼっ。
枝の先に小さな火が現れた。
「できました……」
「ウム、成功じゃな。こんな短時間で成功できるとは思わんかったぞ」
「うん、メルティ、おめでとう」
クルスさん、そしてオパールさんも拍手してくれた。ビビアンさんも噛みしめるように頷いている。
「まずは第一関門突破じゃな。さて次は、オパールの言っていたやつを試してみるか。
こちらはワシにとっても未知の事じゃから、オパール殿、おぬしもアドバイス頼むぞ」
「あ、うん……」
小休憩の後、引き続き次の修行。
「『硬化』の際にゼリー化させるよりもさらに固く、『シリコン』とやらの固さにする。それが今回の修行の最終目標じゃな。
恐らくじゃが、魔素を『練る』ことで出来るようになるのではないか、と思われる」
「魔素を、ねる、ですか……」
「そうじゃ。これはさっきの生活魔法を発展させて『初級火炎魔法』を取得する方法にも繋がるのじゃが……」
ビビアンさんはさっきと同じように小枝の先に火をつける。そして何やら念を込めると、その炎が握りこぶしくらいの大きさになる。
「生活魔法で出した火にさらに魔素を送り、火を大きくする。
これを敵にダメージを与えられるくらいに大きくしたものが所謂『初級火炎魔法』と呼ばれるものじゃ。
まあ本来は小枝を使わず、何もないところで炎のエーテル化する練習も必要じゃがな。今回は後回しじゃ。
で、だ。炎を大きくするわけじゃが、ただ魔素を送るだけではそこまで大きな炎にはならん。
ただ送っただけでは、魔素は拡散して逃げて行ってしまう。
魔素を留めておくために、1か所に集める練習が必要じゃ。
これを『魔素を練る』と呼ぶ」
ビビアンさんは自分の持っている小枝の炎を消し、改めて火を灯し、今度はゆっくりと炎を大きくしていく。
「どうじゃ、分かるかえ?まあ分からずとも、魔素が渦を巻いて火の真ん中に集まるイメージじゃ」
「ううん……まだ分かりませんけど、なんとなくイメージは出来る……ような……」
「ウム。今はそれでええ。まあとにかく、これをメルティ殿の体で同じようにイメージでやってもらおう」
「はい、分かりました」
「まずは普段通りの『硬化』からじゃな。メルティ殿、一番最初に硬化させた場所はどこじゃ?」
「ええと確か、手でした」
「フム、ではその時と同じように手で練習するのが良いじゃろうな。まず手を硬化させてくれぬか」
「はい」
私は手を硬化させる。これは一瞬でスムーズにゼリー化できる。
「ではさらに、それをシリコン化させていこうかの。
メルティ殿、その状態からさらに硬化させてくれぬか」
言われた通り、やってみる。
「その際、魔素を『逃がさない』というイメージを持ってじゃ。
手の表面から魔素が逃げている。それを留める。そんなイメージで」
魔素を……逃がさない……駄目だ……。
それを見ていたビビアンさんが眼鏡のようなものを取り出し、自分の眼もとに付ける。
「フム……やはり魔素が漏れ出しておるようじゃ。もっとイメージを強めるか、別のイメージで」
ううん……イメージを変えてみたけど、やっぱりまだ……。
「ううむ……普通の練り方だけではいかんのかもしれぬのう。集めるのではなく、別のイメージに変えて付加すべきかもしれぬ」
「別のイメージ……別のイメージ……ううん……」
クルスさんとオパールさんは静かに様子を見ていたが、クルスさんがオパールさんのほうを向き、何か無いかと言いたげな目で見る。
オパールさんはちょっと嫌そうな顔をしたけど、少し考え……
「メルっちょは体が水だから、水っぽいイメージをやってみたらいいかもしれない」
と答えた。
「水っぽいイメージ……魔素が水みたいなイメージ……?」
イメージしてみる。だがそれもうまくいかない。
「表面に纏う、とか?それか手にクリーム塗るつもりでやるとか」
さっきと違い、クルスさんも思いついたことをつぶやく。
そのイメージでも上手くはいかない。
「う~ん、あるいは……う~ん……」
オパールさんはまだ考えてくれている。ぶつぶつ悩みながら独り言のようにいろいろつぶやく。
「粘着ボールに使った強化エーテル液はどうやって作ったっけ。
確かええと、火の中和剤を混ぜて……火の中和剤はフロジストン……火の魔鉱石……ううん……。
シリコン……正確には何だっけ。確かシリコーンスポンジ……。
シリコーンコンパウンドを加熱、発泡剤を膨らませて気泡を作って……」
その中のいくつか、使えるかもしれない言葉をピックアップしてイメージに加えたりする。
火の中和剤……火……加熱……熱くする……お湯?お風呂みたいなお湯?
火のエーテル……水みたいな魔素……魔素でお湯に変える……お湯を熱く……熱い魔素を表面に纏って……
スポンジ……気泡……気泡ってしゅわしゅわの事……?気泡は魔素……?
魔素を集める。魔素を纏う。魔素はお湯。魔素はしゅわしゅわ……
しゅわしゅわの熱い魔素を集めて纏う……?
じゅっ。
突然手からお湯が蒸発したような音が出る。
がくんと、何かが引っ張られる感覚が起こる。ふらっとめまいに似た何かが起こる。
「……えっ……な、なに……?」
何が起こったか分からず、あたりを見回す。
3人が驚いたような顔でこちらを見ている。私の手のほうを凝視している。
私もそこを見てみる。
……手だ。
いや、いつものゼリー状の手じゃない。
まるで人間の手。
ゼリーのそれっぽい形だけの手じゃない、ちゃんとした人間みたいな手。
でも透明。人間の手みたいだけど透明。人肌色じゃない。そう思った時、じわっとだが手に色がついてくる。
程なくして、まるで本物の人間の手になった。
「なに、これ……」
思わず私はそうつぶやいてしまった。
「ホントに、本当にちゃんとした人間の手だ……」
私はシリコン化した自分の手をまじまじと眺める。
ちゃんと動かせる。グーに握ったりパーに開いたりも出来る。
オパールさんが私の手を触る。
「フム、なるほど、シリコンは表層部分だけで、内側はゼリー化したスライムジェルのままなのか。
それでシリコン素材を折りたたむ感じで指の関節を動かせるんだ。なるほど……」
クルスさんも私の手を触る。
「すべすべしてる……メルティの手、すごくきれいな手……」
私はなんだか照れてしまう。
「でも、なんだかちょっと……このままだと不気味ですね……」
私の両手だけが人間の手で、手首からこちら側はまだスライムの半透明のまま。
多分そのせいで、人間の手だけが宙に浮いたような見た目になってしまう。
「まあ、まだ手だけだしね……ところでメルティ、ちょっとふらっとしたみたいだけど、大丈夫?」
クルスさんがそう心配してくれる。
「確かに、変わった瞬間めまいみたいなのがしました……あれ、またちょっと動かしにくい……かも……」
また体が、昨日の雨の修行の後のように動かしにくい。今回はより動かしにくいように思える。
「ム、もしかして……メルティ殿、また調べさせてくれぬか?」
ビビアンさんがまた水晶玉を取り出す。私はそれに手をかざす。
「……やはりか。MPの数値が大きく減っておる」
水晶玉に示されたMPの数値は、『13/26』。最大MPが26なのに対し、現在のMPは13だ。
「どうやら原因は、MP減少のようじゃな」
「MP、減少……?」
「不慣れな魔導士に多いんじゃが、体内の魔素が枯渇しかけると変調をきたすものがおるんじゃ。
恐らくじゃが、そのメルティ殿の体は魔素で出来ているせいじゃろうな。
魔素が減ると身体が動かしにくくなるのやもしれぬな」
「そっか、つまりこれは、魔素を使いすぎたサインなんだ……」
ビビアンさんの話も推測に過ぎないので、確証はない。でも、魔素減少のサインというのが正しい気がする。
「ちなみに、以前にもそうなったことはあるのか?」
「昨日、雨の日の訓練の後になりました。その時は物理攻撃や粘着ボールの練習だったんですが……」
「フウム……その粘着ボールの際に魔素が減るのか?それとも、雨等のせいか……?」
「う~ん、何か原因があるとは思うんだけど……」
結局雨の日の体の重さの事は、まだ分からない。結論はまたしても持ち込みだ。
「それにしても、メルっちょのシリコン化、ひょっとして使うと不味いのかな……
変えたのは手だけなのに、こんなにごっそりMPが減るなんて……」
「オパール殿の懸念も分かるが……おそらくその直前の魔素を練る修行も関係があると思うぞ。
必要以上に魔素を放出させるので、消耗が激しいのじゃろう。
メルティ殿、これを飲みなされ。魔力回復のマジックポーションじゃ」
言われた通り、渡された瓶入りの液体を体の中に取り込んだ。
MPはすぐに、最大26まで回復した。
「……あ、体の動き、戻りました」
「ふぅ……良かったぁ……コホン、ウム、良かったのう。
さっきの魔素減少のサインを感じたらすぐに言いたまえ。何本か用意があるから、回復させながら練習しようぞ。
さて、大丈夫そうならこのまま続けるが、どうじゃ?」
「……はい、大丈夫そうです」
「ではすぐにでも反復練習と行こうか。イメージが固まているうちに何度も行ってみるのじゃ。
……おっと、その前にその手は戻せるのかえ?」
「えっと……あ、大丈夫そうです」
何となく戻せなかったらどうしようと思ってしまったが、どうやら普通に戻すことが出来た。
「では、再び手をシリコン化させる練習じゃ。今度は1回やる事にMPを図って、正確な消費量を出しながら行おうぞ」
もう一度手をシリコン化させる。今度はスムーズに行うことが出来た。
それを元に戻し、減ったMPをマジックポーションで回復させて、さらにまたシリコン化。
「ううん……何度見ても僕が粘着ボールでやった時とはちょっと違うなあ。こんな、じゅっ、ていう反応は無かったし。メルっちょのほうがうまくて再現率も高い……」
「まあメルティの本体がやってるんだもんな」
「まあ確かにそうなんだけど……」
オパールさんとクルスさんが、私を見ながら二人で話している。聞きながら、私はシリコン化の練習を続ける。
「フム、1回ごとの消費MPは6、と言ったところじゃな。初回のアレはやはり魔素の放出し過ぎだった、という事か」
「あんなにごっそり減るものなのか?」
「まあ、初めて使った魔法が勝手がわからず消費量が増大する、という事はあり得る。今後メルティ殿が他の魔法を覚えるときはその事にも注意しておくのじゃぞ」
「う~ん、メルっちょの手の部分だけで消費MP6。他の部分はどうなんだろう……」
「それはオパール殿が、明日以降の修行で調べておくのじゃ。お主なら機械を作れば調べられるじゃろ?
今日はこのまま手だけで反復練習をしたほうが良いじゃろうな」
「うん、そうだね。ビビやんが見てくれる今日のうちは、そっちに集中したほうが良さそうだね」
というわけで、その後もそのまま、手のシリコン化の練習を続けていった。
練習するたび最初よりもだんだん人間の手っぽくなっていったし、コツも掴んできた。
ビビアンさん、本当にありがとうございました。
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