5話 これからの課題

 外が明るくなった気配を感じる。

 目を〈開ける〉。目の前は陶器の内側。

 あれ、ここは……あ、そっか、そうだった……。

 

 寝ぼけた頭で思い出す。私は昨日、スライム娘になったんだ。

 

「よいしょ、っと」

 上半身を人間の姿に変え、水がめから出る。部屋に朝の光が溢れている。

 

 昨日はあれからすぐに寝てしまったので、客間をゆっくり見渡すのは今が初めてだ。

 ここも、とても豪華な部屋。火はたかれていないが暖炉もある。

 客間にはドレッサーもあったので、鏡で改めて自分の姿を確認する。

 

「………………」

 本当に、スライムの体。透き通った、少しだけ青味のある体。とろとろの粘度のある液体。

 窓から差し込む光が私に当たり、そのまま体を通り抜け、体がキラキラ輝いて見える。

 

 これが、本当に私の体なんだ。これから冒険者として過ごしていくはずの、多分そうなる体。

 

 そういえば静かだな、と気が付いた。

 あ、そうか、聴覚が無い状態なんだ。

 耳の輪郭のあたりを意識すると、音が〈聞こえて〉くる。鳥のさえずりが聞こえてくる。

 それに混じって、誰かの声がする。

 

 外を眺める。クルスさんが剣を持ち、素振りをしている。朝の自主練だろうか。

 昨日のレオタードみたいな恰好とは違い、シャツと半ズボン。だいぶラフな格好をしている。

 

 そういえば寝る前、ちょっと気まずくなって別れてしまった。

 ……ちょっと会いに行こう。

 

 廊下のドアノブを、指をゼリー化して握りしめ、開ける。廊下を下半身のまん丸部分で這いずるようにして進む。

 昨日より、だいぶ自然に一連の動作がこなせるようになった気がする。

 どこか戸惑っていた昨日と比べ、一晩寝たおかげか、前より少し今の姿でいることにしっくり来ている気がする。

 

 

 

 裏口の扉があったのでそこに近づく。カギは空いていたのでドアを開けて外に出る。

 庭は高い塀で囲まれているのでお隣さんに見られる危険性はないようだ。石畳の上を這いずって進む。

 

「クルスさん、おはようございます」

 クルスさんに声をかけると、クルスさんは振り向いて答えてくれた。

 

「あ、メルティ、……おはよう。昨日どうだった?ちゃんと眠れた?」

「ええ、よく眠れました」

「そ、そっか、良かった……」

 クルスさんのほうはちょっと寝不足気味のようだ。別れた後悶々としていたのかもしれない。

 

「クルスさん、今日から、よろしくお願いします」

「う、うん、よろしく……」

 クルスさんは照れながら素振りに戻った。

 

 

 クルスさんは男だったわけだが、私は昨日の晩御飯の時と同じように話しかけることにした。

 服を着ていない姿で胸が露わだったけど、晩御飯の時は隠さずこのまま食べたのだ。

 その時クルスさんはいやらしい目で見てくるわけでもない、紳士的な態度だった。

 なので今更変に意識すると、クルスさんをいやらしい男として意識してしまっている証のような気がする。

 

 まあ、人間の頃の裸と今の透明な形のそれとではだいぶ雰囲気が違うしね。

 それに胸が露わと言っても、乳首は無いつるんとした形だし、まあそもそも特に恥ずかしがるほど立派というわけでもないので……うん。

 

 とにもかくにも、『男だけど、女として』生きている人である以上、私も変に意識せず自然に接するべきなんだろうなと思った。

 


 そうだ、私もクルスさんみたいに自主練とかしてみようかな。本格的に冒険者を目指せるようになったんだし。

「あ、クルスさん、私も朝練やってみます」

「う、うん……」

 

 外壁際に長めの木の棒が立てかけてあったので、手をゼリー状にして棒を持ち、木刀に見立てて構えてみる。

「えいっ!」

 木刀を振り下ろす。

 すぽーんと、木刀は吹っ飛んで行った。……私の腕ごと。

 私のゼリーの両手をくっつけたまま吹っ飛んだ木刀は、クルスさんの目の前を掠めて、庭の塀にぶつかった。

 

「………………」

 クルスさんは一瞬固まった後、私のほうを振り返り……

 

「ご、ごめん!昨日の事怒ってるんだよね!

 でも本当に、本当に昨夜は何もしていないから!

 悶々として眠れなかったのは事実だけど、本当に、本当に何にもしていないから!

 覗いたりとか絶対してないから!!」

 ものすごい勢いで謝り始めた。

 

「い、いえいえいえ、そんなんじゃなりません!私のほうこそほんとにホントにごめんなさい!!」

 何度も何度も謝り続けるクルスさんのために、さっき心のうちに秘めておこうと思った、クルスさんとの今後の接し方の件とかをいろいろ言葉に出して弁明する羽目になった……。


 

 

「はっはっは、お二人さんおはよう、ゆうべはお楽しみでしたね」

 朝練を終えてダイニングに入ると、オパールさんが朝食の準備をしながら挨拶した。謎のフレーズを挨拶の後につけて。

 

「テメー、分かっててからかってるだろ」

「そりゃあ朝から庭であんだけ大騒ぎしてりゃあね。姿違いの二人は大変だねえ」

 オパールさんは、クルスさんと私をからかうように言った。

 

 

 朝食は簡素なものだったが、とても美味しかった。

 

「姿が変わるジョブって、他にもあるんですか?」

 気になったので、クルスさんに聞いてみた。

 

「俺は知らないなあ。一昨日までは俺だけだと思ってた」

「ボクの知る限りでも無いよ。君たち二人くらいのもんだと思うよ」

 オパールさんも答えてくれる。

 

「前衛系の職業でちょっとだけ筋肉が付いた、とかはあるけど、本当にちょっとだけの変化しかないな。ここまで劇的に姿が変わるのは、俺の『女勇者』と、メルティの『スライム娘』くらいだと思う」

 そうなんだ……やっぱり珍しいんだな。


 

 

 朝食の後、私たちはオパールさんの部屋に招かれた。

 オパールさんの部屋は、いろんな実験器具や機械が多い、研究室みたいな場所だった。実際、研究室として使っているらしい。

 オパールさん曰く『学校の理科室を再現した』という机に、背もたれの無い四角い椅子があった。私とクルスさんは促されてその椅子に座った。

 

 オパールさんは机の前の黒板にチョークで字を書きながら話し始めた。

「さて、今日からメルっちょの修行編を始めるところだけど……まずはその前に整理してみよう」

 2つの単語を書き終え、それを指しながら話し始めた。

 

「ボクが思うメルティ君の課題は、大きく分けて2つ。なので、修行も2つに分けて行うのがいいと思う。

 まずは【冒険者の修行】。

 もうひとつは【日常生活の修行】。

 この2つを修行として頑張ってもらいたいと思う」

 オパールさんは、学校の先生みたいに話し始めた。結構似合う。私の呼び名もそれっぽく変えている。

 

「説明していくよ。まずはこっちの【冒険者の修行】。

 まあ要するに戦闘訓練だ。

 メルティ君のジョブは『スライム娘』。今後はスライム娘として活動していく事になる。

 つまりスライム娘としてダンジョンを探索したり、敵と戦ったりして成果を上げていく。ここまではいいね?

 そのためにはまず己を知る必要がある。

 今朝みたいに、君は剣を持ったりなど、人間と同じようには戦えない。

 なので、スライム娘として独自の戦い方を身に付けてもらわねばならない」

 

 確かに、その通りだ。

 今朝の騒動を思い出すと、私はどう考えても人間と同じようには戦えない。

 私のやわらかな腕は、剣の素振りにすら耐えられないのだ。

 

「ではどうすればいいのか。その答えは『スライムの戦い方』を知ることだと思う」

「スライムの戦い方……ですか?」

 

「クルス君、ちょっと答えてもらいたい。君は野良のスライムとは何度も戦ったことがあるだろ?」

「ああ、まあ……どこにでもいる雑魚モンスターだからな」

「普段スライムは、君にどうやって攻撃してくる?」

 冒険者として戦いの場に出たことすらない私には答えられない質問だ。

「そうだな……基本的にはすぐ逃げるが……襲い掛かってくるときは基本『体当たり』だな。

 普段はぐにょぐにょの体を丸いボールみたいにして、体ごと俺に突っ込んでくる」

 

「その通りだ。その際に、普段の液状の固さからある程度の硬さまで体を変化し、体をぶつけてくると思われる。

 メルティ君が食事の時に指をゼリー状にして見せてくれたが、それと同じ技術を使っているものと思われる」

「全身を、ゼリー状に……」

 なるほど……。正直、どうやってこの先戦っていけたらいいか分からなかった。

 そのためにこうして教えてくれるんだ。オパールさん、優しい。

 

「全身を、か。出来るかな……」

「まあその辺の技術の練習などは後回しにして、今は座学を進めていこう。ともかく、それが【冒険者の修行】だ」



 

「さて次にもうひとつの【日常生活の修行】のほうを説明していく」

「日常生活……ですか?」

 修行と日常生活。ミスマッチな単語が一行に並んでいる。

 

「本人も重々承知していると思うが、今は一挙一動がすべて未知の状態からのスタートだ。

 メルティ君はそれなりに順応できているようなので、今後も恐らく重大な問題は無いとは思うが……

 それ以上に君には無視できない問題点がある。

 君の今の姿は『モンスター』そのものである、という事だ」

 

「……モンスター……」

 確かに、その通りだ。自分では受け入れつつあるが、改めて言われるとちょっと切ないものがある。

 

「君は野生に生きる魔物ではなく、街で生活していくれっきとした『人間』だ。

 しかし、君の今の姿は余りにもモンスターすぎる。

 人間サイズもある大型のスライムだ。街の住民には間違いなく怖がられる。

 それだけならまだしも、最悪の場合、街に侵入した魔物として討伐対象になってしまうかもしれない」

 

「……討伐……」

 そうだ。薄々、勘付いていたことだ。今の私が街に出ていけば、どういう結果になるのか。

 私は、街を護る憲兵さんとか他の冒険者に、討伐……つまり、殺される。そんな可能性が。

 

「かといって、街の生活を避け、野に降りて完全にスライムとして生活することもできない。

 ギルドや街の店を訪れなければ冒険者としては生活は出来ない。

 それに、メルティ君も人間としての生活を捨てたくはないだろう。

 それは人間性は捨てるという事だ。人間性を捨てるという事は、本当のモンスターになり下がるという事だ」

 

「…………」

 何も言えなかった。

 

「オパール、質問。普段はジョブを辞めて人間として生活して、仕事の時だけスライム娘になるのは駄目なのか?」

 

「良い質問だな、クルス君。一応は可能だろう。だがあまりお勧めはしない。

 君自身の時はどうだった?『休日男性で仕事で女性』の生活は送れたか?」

 

「……いや、出来なかったな……」

「その理由は?」

 

「一番は、ギルドでジョブを変更したり辞めたりする時の『手数料』だな。

 初回以降は有料だ。高くはないが、それでも新人の頃は結構な負担になる金額だった……」

 

「そう、その通り。

 ただでさえ安すぎる初級依頼の報酬。加えて、次回の冒険のための準備も必要だ。

 回復アイテム等の消耗品、食料や水、泊まっている宿屋の更新費などなど……

 武器や防具のグレードアップも必要になるので、ある程度の貯蓄も必要。折れたり壊れたり無くしたりで予定外の出費の可能性もあるしな」

 

「ああ、そうだった、確かに全く余裕無かった……。

 その中で、元の姿に戻るためだけの出費には、手が出せなかったな……」

 

「まあメルティ君の場合、武器や防具がどういうものか今は思いつかないが、少なくとも他の出費はある。

 果たしてその中で、仕事の無いときだけ人間に戻る生活を送り続けることは可能なのだろうか……

 というわけでだ。メルティ君は今後、街中でもモンスターのまま生活する。そうなると思われる」

 

「確かに、理屈はわかりますが……」

 それこそ可能なのだろうか。

 モンスターとして討伐される可能性に震えながら、街中で普通に生活するなんて……。

 

「まあ、可能なのかって思うよな。クルス君の時のようなキャッキャウフフのドキドキハプニングとは違う。君の場合は命の危険だ」

「いや、そんなキャッキャウフフな事なんて特になかったが……」

 ぼそっと反論してた。

 

 

「そこで、だ。メルティ君。ちょっと昨日みたいに、足を生やしてもらえるかな」

「あ、はい。でも……」

「いや、立ち上がらなくていい。座ったままで結構」

「それなら多分、大丈夫です」

 

 まん丸の下半身を、人間の足に変える。人間の頃のように椅子に座った形になった。

 

「うん、形だけなら問題ない。普通に人間に見える。

 しかし問題は色だね。その透き通った姿は人間に見えない。

 逆に言えば、色さえ付ければある程度は人間に見えるかもしれないな」

 

「人間に見える……えっとつまり、目的は人間に『化ける』って事ですか?」

 

「はっきり言ってしまえばそういう事だよ。

 人間に化け、モンスターのまま、市勢に紛れ込んで生活する。それが目標だ。

 なあに、前例がないわけじゃないよ。

 魔王が生きていた昔の時代、人間を騙すために魔物が妖艶な女性に化けていたという事例がある。

 あるいはおとぎ話だけど、恩返しのために人間に化けたっていうのもあるな」

 

「でもさオパール、そういうのって『変身魔法』ってやつだろ?しかもかなり高度な。

 今は失われた技術……というよりも、もはやおとぎ話の中だけのモノだ。

 超熟練の魔導士ならともかく、新人のメルティが覚えられるとは思えないんだが……」

 

「まあそうだね。だが『化ける』だけならそんなに難しい話じゃあない。

 猫耳族や犬耳族が、差別のあった時代、耳や毛を服装で隠して生活していたそうだ。どうしても隠し切れない部分を化粧で誤魔化したりしてね。

 だから、『魔法で変身』は無理でも、『変装』なら充分可能なんじゃないかな」

 

「変装……まあ、それなら……」

 

「まあ『スライム娘』というのがジョブである以上、冒険者ギルド内では隠し切れないだろう。

 最低でもパーティー内の仲間くらいには正体を明かす必要はあるだろうね。

 そのへんをどう隠すか、どうバラすかは、ケースバイケース、という事になると予想している」

 

「パーティー、か……」

 いつかは私も誰かとパーティを組んで冒険するのかな。するんだよね。まだ想像出来ないくらい遠い世界の事だけど。

 

「まあどこまで出来るかは不明瞭だけど、とりあえず不要な衝突を避けるためにも、『魔物のまま人間に変装する技術』は必要になると思う」

 

「う~む、まあ、完全に人間に変装は出来なくとも、ある程度なら……ちょっと変わった亜人種くらいに思われるくらいになれれば、受け入れてもらえるかもしれない……かな?」

 

「まあ、そういう事だよ」

 

「なるほど……」

 完全になるほどしか言えなくなってしまったが、オパールさんもクルスさんも、すごく私の事を考えてくれてる。

 

「ん、というわけでまずは、その透明な色をなんとかするところからかな。あと足で立ち上がる」

 

「服の問題もどうにかしないとな……」

そういえばずっと目線を外していたクルスさん。上半身は慣れても、下半身はさすがにまだ慣れてもらってなかったか……まん丸に戻しておこう。

 

「とりあえず、見た目、歩行、服装。この3点を【日常生活の修行】としていこう。

 まあ1週間でどこまで可能かは分からないけどな、出来る限りやってみよう」


 

「なるほど、【日常生活の修行】、あと、【冒険者の修行】か……」

 

「という感じで、これがメルティ君の課題だ。どうだい?」

「うん……いいと思います!」

 私は頷いた。

 

「オッケー。メルティ君がやる気になってくれてよかった」

 

 

「それで、どうやって進めていこうか」

 

「そうだね……この大きく分けて2つの修行を、交互にやっていくのがいいと僕は思う。

 今日の午前は【冒険者の修行】、午後は【日常生活の修行】という風に。

 明日はその逆にしよう。これを1週間行う。どうだい?」

 

「うん、良いと思います」

 

「了解。それで各修行だけど……クルス君、君は【冒険者の修行】のコーチに適していると思う。

 各種スライムとの戦闘経験が一番多いのは君だ。その経験と知識を元に、いろいろ見てやってほしい」

 

「オーケー。任された」

 

「【日常生活の修行】のほうは僕が受け持ったほうがいいかと思うが、どうだろう。

 正直『スライムを人間っぽく』なんていう、前代未聞の事をするんだ。

 錬金術や異世界その他もろもろの知識が、何かの役に立つかもしれない」

 

「そうだな、俺はそっちのほうの案はさっぱりだ。そう言うからには何か当てがあるんだろ?」

 

「まあね。という事で、各修行はそれぞれが行うという事で。

 まああくまでメインコーチを役割分担って事にするけど、思いついたことがあれば口を出すし、クルス君もこっちに口を出しても構わない。

 どこまで可能かは未知数だが、メルティ君のために全力を尽くそう。

 そういう感じでひとつヨロシク!」

 

 

 

「ありがとうございます。何から何まで……」

「ん、まあ、気にしないで」

 早速最初の修行を外で行おうという事になった。私は廊下で移動しながら感謝の意を伝えた。

 

「……うん、そうだな、うん……」

 クルスさんは何か考え事をしながら歩いていたが、外に出る扉のノブに手にかけたところで立ち止まった。

 

「なあメルティ、一応修行って事になるんだし、条件をつけないか?」

 今日はなかなか目を合わせてくれなかったクルスさんが、真剣な顔でこちらを向きながら問いかけてきた。

 

「1週間後の最終日にさ、『卒業試験』って事で、君に課題を出そうと思う。

 まだ具体的には決めてないけど……俺のほうは戦闘面、オパールのほうは日常生活面で、君にノルマを出す。

 君はそれをクリアしないといけない」

 

「ノルマ……」

 

「メルっちょが失格したらどうするんだ?冒険者を諦めてもらう、とか?」

 

「いや、そこまではしないけど……そうだな……。

 失格したら、一旦冒険者を中止。人間に戻って、普通に人間としてしばらく生活していてもらう。

 期間は俺たちがまたこの街に戻ってくるまでだ」

 

「スライム娘禁止令って事か」

 

「オパールの話を聞きながら思った。

 冒険者として未熟すぎるなら、戦闘で生き残れない。魔物との戦いで命を落としてしまうだろう。

 日常生活が出来なければ、討伐される未来待ったなしだ。いずれにせよ生き残れない。

 不合格の時は再び俺たちが戻ったら修行再開して、その後再試験。どうかな?」

 クルスさんは私にそう問いかけた。

 

 人間として生活する。やっとここまで手が届いた冒険者の切符を一度手放す。

 ずっと冒険者になりたいと思っていた私にはつらい条件だ。

 再び二人が戻ってくるのはいつになるかは分からない。最悪戻ってこない場合もあるだろう。

 最初の試験の不合格ですら、夢を諦める、という事になりかねない。


 でも、これは私の命を守るために提案してくれていること。

 こんなに私の事を思ってくれる人など、この先現れないだろう……。

 

「分かりました。それでお願いします」

 私は真っすぐクルスさんの目を見据えて、そう答えた。

 

「……よし、それじゃあ行こう」

 

 

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