第4話


『ねえ、おとうさん。あとどれくらい?』

『うーん、あと1時間くらいかな?』

『そうね、じゃあ葵寝たら』

『えーねむくないよおかあさん!』

『でもおばあちゃん家着いた時に元気ないと楽しめないよ?』

『うーん、わかった!じゃあおひざでまくらして!』

『もう、3歳になっても甘えんぼさんなんだから。仕方ないわねー、おいで?』

『やったー!』

そこで幼い私は意識を手放した。そこから目が覚めたら。

広がっていたのは、おばあちゃん家ではなかった。

ぐったりとして呼吸が荒いお母さんとお父さん。車は炎上していて、うるさいほどのサイレンの機械的な音がやけに耳に残ってたのを一番鮮明に覚えている。

『おかあさん!?おとうさん、おきて!お母さんが、、、え?』

何かに抱き寄せられる。お父さんだ。

『ごめんな、ただ普通に生きれたら良かったんだが。

いつか、大きくなったら一緒にお酒でもなんて思ってたが、それは諦めるしかないな。』

『生きてくれ、葵』

お父さんは割れた運転席側の窓から思い切り私をなげた。自分の服を私に巻いて。

その行為は私がケガをしないようにと配慮したかは定かではないが妙な温かさだけは確かに私の中に残っていた。

『おとうさん!おかあさん!待ってよ!置いてかないで!』

『危ない!』

近くに駆け寄ってきた救命隊の人が私を制する。

『まだ、こんな小さい子が取り残されていたなんて。本部、一名を保護。』

『ま、まだおかあさんとおとうさんが、、!』

『何だって!?大丈夫今助け

その言葉を言い切る前に状況が変わった。

ドーン!、という爆発音と共に色々な破片が落ちる音が聞こえてくる。

車が爆発した。

その日を境に私の心は深く深く落ちていった。

同時に、こう思う。大切な人がいるとその分悲しい気持ちも増える。人が怖い、と。



何年経ってもそれは変わらず私を大切に思ってくれる人たちがどんどん減っていく様を見て心底辛くなった。

そこに現れたのが舞香だった。

『心底つらそうな顔してるけどどした?』

『お腹減ってんの?』

最初こそ呑気な話をしてきたが彼女は私との間合いをちゃんと測ってくれていた。

そうするうちに、昔のことを舞香に話してしまう自分がいた。

それを聞いた舞香は、ただ何も言わずに啜り泣く私の背中をさすってくれていた。最後に。

『大丈夫、私はいなくなんないから』

と抱擁を交わしてくれた。

そんなフラグを立てた舞香は今でも健在なのでいまだに親友をやれている。


そんな昔があるから私は大切な人を作らない、作ってはいけないんだと思う。

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