第28話 戦闘狂達の分裂

「なぁ、黒闇地獄って、知ってるか?」

 ヒタツが一歩踏み出し、ポケットに手を入れた。

「あ?なんだよそれ」

敵が首を傾げた。

「はっ、俺の術式だ」

「それがどうした?」

「俺の術式は影を操るんだよ」

「それじゃあ簡単じゃねぇか。日向に出れば良い話、だろっ!!」

敵が走り、広場に出た。

『黒闇地獄 突』

ヒタツがほくそ笑んだ。

 突如、敵の影という影が、棘のように進化し、そのまま敵を刺した。

「あがっ」

「誰が日向でも効かないと言った?」

これがいっちばん楽しいんだよ。この敵の驚きと困惑に満ち、屈辱的であるることが見てわかる、この表情を見るのが!!

「どうする?こいつ、殺す?」

「ユーゴーとのお約束は?」

「…そ」

『黒闇地獄 封』

ヒタツは敵を拘束した。

 その後、再び三人は中学校へ向かっていた。

「先程は本当にありがとうございました」

「いえ、日常茶飯事なのでお気遣い無く」

「大丈夫ですよー」

二人はそう言って笑った。

 素振りをして、空気を引き裂く音が四方八方から聞こえる。

「はいそこ、もっとしっかりと体を落として」

「はい!!」

「重心しっかりしよー!」

「はい!!」

 二人は中学校で剣術を教えていた。小学校よりは、やや厳し目である。

「皆んな同じようなところがダメだね」

「そうだな…時間だな」

「はーい!!!皆んな!!!終わり!!!各自休憩してねーー!!!」

瑆は大声でそう言い、両手を大きく振った。

 生徒達は、大声で一斉に「ありがとうございました!」と言った。

 デドベディグス拘置所にて。

「七百七十七番が暴走!!??」

「はい!!!つい先程、七百七十七番を監視しているものが一名、殺されました!!!」

「なんだと!!??檻の中に入っているのではないのか!!??」

「入っているのですが、何故ぐぁっ!!」

 圧倒的な威圧感。

「七百七十七番」

 言葉で表そうとすると、

「ルカ・フィアー…!?」

触れてはいけない、

「こんにちはー」

視てはいけない、

「何故、」

人類の地雷、

「ここに…!?」

いや、

「何故って…」

言葉にできない!!

「全員殺したからですけど?」

狂人。

 ヒタツ、ルカは最強で最恐と呼ばれている。何故か。それは、詠唱せずとも魔術を使えるからである。数百年に一人の逸材が二人。そう言われるのも当然であった。

「ルカ…が?」

戦友が、罪の無い人間を虐殺した時の気持ちを答えよ。そう、怒りである。

「いや、そんな筈はない。きっとルカの真似をした奴に」

「これを見てもか?」

魔術庁反魔術師対策委員会対策長のナイヤー・ロウィズが写真を掲げた。

「…!」

写真は、全員のイニシャルが彫られたペンダントであった。

「…ルカ…だ。しかし、そんなことをする理由が…!ただでさえ死刑になっているのに」

「逆でしょ」

瑆が俯きながら、初めて聞く、血を這うような低い声で言った。

「死刑になってるから殺ったんでしょ」

瑆は扉の方に歩いて行き、首を横に向けた。

「なんかルカの為に頑張るので疲れた。んじゃあね」

瑆は扉を開け、そのまま出ていった。ドアノブには亀裂が入っていた。

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