第25話 戦闘狂達の戦慄
「ようこそいらっしゃいました」
「一週間ぶりですね」
宮殿に入り、エリカル女王に会った二人は、早速任務内容の、最終確認を行っていた。
「小学校、中学校で剣術の授業をすれば、宜しいんですよね」
「はい、そうです。多少の怪我ならば構いません。国民にもきちんと説明してあります」
「承知致しました」
「それでは、ご武運を」
二人は頭を下げた。
その後、馬車で最北端の学校から回っていくことになった。
「寒いな…」
ヒタツはそう言いながら手袋を嵌め直した。
「今から最北端に行くんでしょ?馬大丈夫なのかな?」
瑆は体を左の少しずらし、彼らを退いている馬を隙間から覗き見た。
「大丈夫らしい…」
ヒタツが右足を上げ、足を組みながら言った。
「それにしても大変そうな任務だねぇ。だってこれ全校を回るんでしょ?一週間で」
瑆が唇を窄めた。
「それは大変なことだな」
その途端、馬の大きな鳴き声が辺りに鳴り響いた。
「はぁ…」
ヒタツが溜息を吐いた。
「どの国にも馬鹿はいるんだな」
「こんなに寒いから雑念だなんて持つ余裕ないと思ってたんだけど」
瑆がそう言った途端、馬車が左右で、綺麗に二等分された。
「おぉ、凄いねぇ、キミたち」
「凄いすごーい」
しかし、二人はいつの間にか近くにあった針葉樹の上に立っていた。その二人の姿を襲った二人の男が見た。
「流石は世界最高峰の魔術師。格が違うな」
一人の男が言った。
「そりゃどうも。お前は最底辺か?」
ヒタツは歯茎が見えるほどに口角を上げ、目を細めた。
「あ?」
二人の男が目を細めた。
「だってさぁ、あれ二等分できるんだったら僕たちも二等分できたよねぇ。僕らならできてたよ?」
瑆がニコニコと微笑んだ。
「クソガキがっ!!!」
二人の男はそう叫んで、ヒタツと瑆に襲い掛かった。
「自ら間合いに入ってくれるだなんて、優しいんだな、お前らは!!」
ヒタツはそう言うと右手を胸元の辺りで腕を伸ばし、手の平を上に向け、人差し指以外を曲げ、人差し指と親指で、Lの字を作るようにした。
『黒闇地獄 封』
そう唱えた途端、二人の男の周りが暗くなり始めた。そして、体が硬直した。
「何!?」
「ちょっと待って?リタイアするの早すぎない?早すぎてつまんなーい」
「まだ…!していない…!!」
彼らはそう言って動こうとする。しかし、指先の一つさえ動かない。
「はいはい、格の違い分かりましたねー…ということで…話してもらおうか。色々とね」
ヒタツは嘲笑した。
三十分後、二人の男は長い尋問と、ヒタツと瑆からの圧力と、焦りで泡を吹いて気絶していた。
「それで…この人達どうすんの?」
「後でこの国の専門の人が来てくれるるしいよ」
「いつの間に繋いだの!?」
繋ぐ。魔術師は、同じ魔術師と、聯繋魔法というもので、テレパシーのようなものを送受信することができる。魔術師でない者、非魔術師も、特別な水晶を持てば可能である。
そしてヒタツはエリカル女王に予めその水晶を渡していた。
「宮殿から出る直前」
「ほぇ…」
「それじゃあ俺たちは目的地に向かいますか。んじゃあ準備運動がてら、走」
「転移」
瑆が口角をほうれい線ができるほどまで上げ、ヒタツの言葉を遮った。
「はし」
「転移」
瑆がそう言いながらニコニコと笑っていると、とうとうヒタツは溜息を吐いた。
「お前もそろそろ使えるようになれよ」
ヒタツが眉を顰めながら、文句を零した。
二人の男の姿が突然消えた。
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