第22話 戦闘狂達の行動

「おい、七百七十七番。起床時刻を過ぎているぞ!!!」

「あぁ、すみません。良き夢を見ていたもので」

 七百七十七番は微笑みを浮かべた。

「今日の朝食は何なんです?」

「俺が答える必要は無い」

「そうですか。残念です」

 野菜炒め、ね。なるほど。前から思っていましたが、拘置所のご飯は意外とヘルシーなんですね。

「今日の飯だ。有り難く食べろ」

「有難いものですねぇ」

七百七十七番が目を細めた。

 七百七十七番はスプーンを持ち、食べ始めた。野菜が硬い。下茹ではしたんでしょうかね。それとも塩を塗していない?どちらにせよ、今日の料理人の経験が浅いことは露骨になりましたね。

「ご馳走様でした。あ、後今回の料理人に言っておいてもらってもよろしいですか?野菜は下茹でを十分にする、そして塩を塗すように、と」

「余計なお世話だ。お前は黙れ」

あー酷い。私はきちんとアドバイスをしてあげただけなのに。

 まぁ良いでしょう。この生活も、後もう少しでおさらばなのですから。

 それにしても汚いですね。この独房。至る所に蜘蛛の巣が張っています。そしてときどきする鼠や蜚蠊の音。ここにはユーゴーは来れませんね。

 まぁ、彼はそもそもここに来るはずが無いのですけれども。

 ここから出たら、ここの改革を始めないといけませんねぇ。死刑執行する前に感染症で死なれたら面倒ですし。ここに来れて良かったですね。前までの生活ならばここの状況は分からずじまいであったでしょうから。問題点がすらすら出てきますねぇ。

「さて…いつにしようかな…」

七百七十七番は目を細め、口角を上げた。

 ヒタツは馬車の中で揺れていた。「今日の任務はエリカル女王の護衛です」

メガネをかけ、スーツを着た男、補助官が言った。

 補助官は、任務随行人の補助をする者で、主にスケジュールの管理や、護衛対象の情報、殺傷対象の情報、任務内容などを仕入れ、提供することが仕事である。

「エリカル女王?」

「はい、ドイタニア帝国の女王です」

「そんな国聞いた事ないんだけど」

ずっと窓の外の景色を眺めていたヒタツは、補助官の方に目線を向けた。

「最近発見された島で、まだ認知度は低いと思われます」

「なるほど。それで、続けて?」

「はい、エリカル女王は国の支配する能力が高く、彼女を手に入れることで、自国の政治体制を豊かにしようという狙いから、常に命を狙われています。今回は、国際協会の、宴会に参加されるとのことで、ヒタツさんに任務が依頼されました」

「ならほど。良いよ、受けておいて」

ヒタツはそう言うと、また視線を窓の外に戻した。

 そして同時刻、瑆も同じ内容の依頼を受けていた。

「それってヒタツと一緒にしないといけないくらい大変な任務なの…?」

「何せ女王ですから…成功確率は高めておいた方が良いということでして…」

瑆が体を前に倒した。

「だって僕絶対にヒタツに嫌われてるもん!!!絶対にぃ!!!!」

「瑆さん、落ち着いてください?」

「落ち着いてるよぉ…わかったよぉ、その任務受ける…」

瑆は依然、体の位置や角度は変えぬまま、顔だけ上げた。

「瑆さん」

「なぁに?」

「ヒタツさんには瑆さんがいる事言ってませんよ」

「えっ!?」

「なので、余程な事が無い限り一緒に任務を受け入れられますよ」

その日、家の中に「やったぁぁぁ!!!ヒタツ面倒くさがりだから絶対に受けてるよぉぉぉぉぉ!!!!」という狂喜乱舞した、喚声が鳴り響いた。

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