第14話 心配
恋人生活(偽)2日目
今日は薫科哉とクレープを食べに行った(無理矢理)。俺はいちごがたっぷりトッピングされたもの、薫科哉はバナナがたっぷりトッピングされたものを頼んだ。薫科哉が買ってきてくれるというので席を取って俺は待っていた。俺は念の為に変装、黒い帽子を被りブルーライトカット眼鏡をかけていたので近くにいた子供(恐らく小学生)に超怖がられた。そうこうしていると薫科哉が取っていた席にクレープを両手に持ちながら近づき、俺に頼んだものを手渡してくれた。そういえば、このシチュエーションは俺が女役なのか、男役なのかどっちなのであろう。女役が頼んで頑張って恋人に渡す、というのも想像できるし男役が恋人を休ませるために座らせて自分が買いに行く、というのも想像できる。そう思ったため薫科哉に聞くと。「知るわけないじゃないですか」と、冷たい声で言われた。…俺って薫科哉に嫌われてるのか????
「……いやこれ普通に友達でもやるじゃん、多分」
見返してついそう思ってしまった。ゲーセンだって友達と行くところでもあるだろうし、クレープ屋さんもそうであろう。それじゃあ「デート」とは一体何なのだ!?またこれは明日、薫科哉に聞かなければならない!!俺はそう決意して、眠気に身を任せた。
「………そんなの本気で知りませんよ…というか、そんなの気になります?」
「え、気になるでしょ」
「デートとは何なのか」という疑問は出るでしょ。
「はぁ………双方がデートだと思えばそれはデートでしょ」
「?」
「そもそもデートをネットで調べると交際中又は互いに恋愛的な展開を期待していて、日時や場所を決めて会うこと、その約束、などと出てくるんですよ。つまり、ただの概念、ってことですよ」
「おぉ…」
「だから君がデートだと思ったらデートなんですよ」
「ってことは薫科哉もデートって思ってるってこと??」
「いいえ?」
薫科哉が片眉を上げた。
「あくまでも仮、ですからね」
「チェッ」
「そろそろチャイムなりますよ」
「良いじゃん。隣の席だし、つか後5分あるじゃん」
「鬱陶しいです」
薫科哉が俺の体を緩く押した。
「あら、優しい押し方」
「怪我されたら困りますからね。ファンを敵に回すのは面倒です」
「なんだぁ…」
「期待しないでください」
薫科哉が眼鏡をくいっと親指と中指で挟むようにして持ち上げた。…それにしても
「薫科哉なんでそんな眼鏡かけてんの?」
「はい?」
「ぜんっぜん目が見えないんだけど」
「どうでも良いでしょそんなこと」
「…まぁそうだけど」
「…………何です」
俺は薫科哉の顔をじぃっと見つめた。
「いや、眼鏡外してくれないかなぁ…って」
俺がそう言うと薫科哉の手が少し震えた。
「絶対嫌です」
「はいはーい」
キッパリと断られた。そして丁度、授業が開始するチャイムが鳴った。
「ちょっと、速いです!!!」
「早くー!!!」
今日は1週間に一回屋上が解放される日だ。
「なんで一階から屋上までの階段をそんな軽々と登れるんです!!!インドアには死ですよ!!」
薫科哉はそう言いながら手すりを持って登ってきた。
「早くっ早くっ!」
「あ"ぁもぉ!!!」
俺は何段か降りて手を差し出した。
「掴んで」
「はい?」
薫科哉がそう言いながら俺の手を掴んだ。俺はしっかりと握るとそのまま薫科哉を投げた。
「受け身取って!」
「うおっ、ちょっと!?」
薫科哉は壁にぶつかる一歩手前で何とか止まった。
「何するんですか本当にもう!!」
「貴重な体験でしょ」
「君が友達いない理由って絶対に性格にもありますよね」
「薫科哉がいるから大丈夫でしょ」
「やめなさい、女たらしめ」
「どもども」
「…さ、誰もいない今のうちに場所を取りましょう?」
薫科哉はそそくさと扉を開けて、進んでいってしまった。
「待ってよん」
「キモい」
そう言いながらも少し笑った薫科哉を見て、変な感じになった。
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