第11話 恋愛とは

 薫科哉に頭を叩かれてから約2週間、俺は撮影に励みながら、恋愛について勉強していた。もちろん、薫科哉も道連れに。最初の方は本気で抵抗していた薫科哉であったが暫くすると諦めていた。

「はぁ…これいつまでやるつもりなんです?」

「この小説で読んだ乙女心、ってやつを理解するまで?」

「不可能に近いですね。乙女心なんて分かるわけないですよ。なんなら女性でも分からない、っていう人もいるくらいなんですから」

「けどわかりたいじゃん」

「はぁ…」

薫科哉が大きく溜息を吐いた。

「それだったら手っ取り早く恋愛をしてみたら良いんじゃないですか?貴方なんか秒で恋人くらいできるでしょう」

「そうかなぁ?」

「そうです…というか、あともう少しで夏休みですけど。貴方いつまでそれ、続けるつもりなんです?」

「夏休み中は無理かなぁ…」

「そうなんですか?」

「ほら、冬那のオーディションの手伝いをしないと」

「冬那???」

あれ、説明しなかったっけ??

「ほら、あの、髪の毛が真っ白の…」「ああ、あのメンヘラ女ですね」

薫科哉が眉を顰めた。

「印象悪すぎない?」

「当たり前です。道連れとはいえ、あんな形相で追いかけられたらそうなるのは必然です。これでもし印象が超良かったら私Mになっちゃうじゃないですか」

「もしかしたらホラー好きかもよ?」

「嫌いです。心臓に悪いので」

薫科哉が腕を組んだ。

「さてと…今日はこれくらいで終わりかな?」

「では帰りましょうか」

俺たちは帰る準備をし、図書館から出て行った。

 とうとう7月になり、冬那は早速、オーディションに申し込んでいた。俺が協力するのは、演技の科目。歌手兼、俳優というのは、大変だがその分テレビよりも見かける頻度はぐんと高くなる。そのため、もしも歌手だけではない、という選択肢をしても良いように演技力の審査があるのだ。

「中々にハードだな…」

自室のベッドに寝転がりながら呟いた。

それプラス、ドラマの撮影。そしてクッソ長い。1クールだけで確か二十何話くらいあったのだ。最悪土日のどちらかが丸々潰れてしまうこともある。そして成績の維持。中々にハードなのである。

「飛逹ー!ご飯ー!!」

「はーい!」

俺は急いで部屋から出て、階段を駆け降りていった。

「今日はどこ行ってたの?」

「図書館」

俺はテーブルに品を並べながら言った。

「何で?」

「恋愛についての勉強」

「まだやってるんだ」

「だってやりにくい…何の感情も湧かないからさ…」

「はーん」

俺たちは席についた。

「いただきます」

「そだ、冬那ちゃんに聞いてみたら?乙女心とかについて」

「…変なこと言ってくるだろ」

「信用の無さが泣けてくる」

奏多が額に手を当てた。

「だって聞こうと思ったら「ね、そのクラスの誰かと殴り合いして私のクラスに来て!」って言ってきたんだぜ」「相変わらず過激だな…」

奏多が口角を少し上げた。

「薫科哉くんは?」

「俺に恋人がいるわけないだろってブチギレられた…ってこの話前も言ったくね?」

「あれ、そうだっけ…やっばぁー、26だからそろそろ老化が」

「夜道に気をつけなよ」

「護身術は身につけてます」

「あら、そうですか」

俺がそう返事をすると奏多が手で口を隠しながら笑った。そしてしばらくすると「あっ」と言って顔を上げた。

「明日は撮影だからねー。クッソ重要な部分だから」

「わかってる。台本見てなんとなく察した」

「良かった。あの人中々説明しないからなぁ」

「監督のこと?」

「そう」

奏多が頷いた。

「今日のハマチいつもと違う?」

「お、よく気づいたな。いつもよりちょい高め」

「通りで蕩けると思いましたわ」

そんな会話をしていた。

「飛逹君!」

「はい!」

「この回はかなり重要なシーンだから、そこのところよろしくね」

「はい!」

 俺がそう返事をすると監督は戻って行った。

「飛逹君、がんばろ!」

「そうだね」

 あるところに、仲の良い男女の4人組が居ました。そして約束しました。

「子供ができたら隣の家に住もうね」という。

 それが私たちです。

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