第7話 特別

「さて、今夜のゲストは、演陵 香里奈さんです!」

「はぁぁぁーい!!よろしくお願いしまーす!」

「本当にテンション高いですよね」

「こうしないとやってらんないんだよ」

「いきなり素が…!」

「えへ」

 香里奈は気紛れだ。テンションが高い時もあれば、低い時もある。いきなり真顔になる時もあれば、いきなり笑顔になる時もある。本当の気紛れ。

 普通であれば、そんな奴は「情緒不安定」だとか「異常者」などと言われるのであろう。そう、普通であれば。

しかし香里奈は、香里奈は香里奈なのであり、香里奈の言動、情緒、全てが香里奈である、とすることに成功した。香里奈は女優(香里奈)や、香里奈(女優)ではなく香里奈、として自分を売っていった。それは、なかなかできることではない。

「諒平タイプか…」

 しかし諒平は逆であった。諒平は、飛逹と同じように、隠して、隠して、隠して、仮面を何重にも被っていた。そしてそれは時と場合によってすぐに変わる。そう、万人受け。悪い言い方をすれば、八方美人。けれども諒平に関して、それを誰も気づくことはなかった。諒平は、香里奈とその他の特に親しいもの以外、素を出したことはなかった。

「それにしても…諒平に似てきたな」

良い具合に跳ねた金色に近い茶色の、けれど一部分だけ赤毛っぽい髪、綺麗な青色の、少しだけ吊り上がった目。そして…キャラをよく作る。

「はぁ…」

「奏多ー!」

「はいはーい」

…ま、親が意識不明だったらそうなるのか?

「このお皿取って!」

「はいはい」

 でもこの子供に、大人の保護を。未だ未熟な子供なのだから。香里奈達が目が覚めるまでは私が親だ。

「奏多ー!行ってきまーす!」

「いってらっしゃい。後で行くからね」

2021年4月7日。今日は、演陵 飛逹の中学校の入学式だ。

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