第24話 宣戦布告
帰り道は烏丸が自分と良子に人の目から隠す術をかけて、こっそりと教室に戻ることにした。もちろんお互いを見失ってはいけないから、手を繋いだままである。
「この辺は人がいなくてよかった。しかし手を繋いで学校内を歩き回るのはデートみたいだな!」
「からかわないでよ、もう。優さんとすれ違ってしまったら大変なことになってしまうもの。気は抜けないわ」
二人は危ないことをしているのにも関わらず顔を見合わせて少しだけ笑った。
「さっきは授業にでず、保健室にも居らずどこほっつき歩いていたんだい?」
背後から声がかけられた。しかし今は術がかけられているから見えているはずがない。
「直接話すのは初めてだね烏天狗くん。それで、良子は何をしていたのかな?」
烏丸と良子の間にかつてないほどの緊張感が走った。
もしかしたら別の人に話しかけているかもしれないと、気づかないふりをして通り過ぎようとしていると。
「君のことだよ、良子。残念ながら僕には人の世ならざるものが分かるのさ。後ろにいる烏天狗が浮気相手かい?」
「もっ、申しわけございません。紹介が遅れました。彼は烏丸天くん。友人です」
「あくまでと友人と言い張るんだね。まあいい。良子、放課後になったら話したいことがある。誰にも聞かれたくないから立ち入り禁止になっている屋上で待っているよ。それと烏天狗。今だけは見逃してやるよ。今度近づいて来たら……」
優は制服のポケットから古びた紙を何枚か持ち出した。古びた紙は長方形で、墨で何かの模様が描かれている。その中には文字のようなものも混じっている。
「これでお前を拘束する。その先どうなるかは、まあ想像できるだろう?」
それだけ言うと、もう二人に今は興味がないと言わんばかりにすぐに立ち去っていった。
「松雪さん。あいつは危険だ。あの札を使えるのならばあいつは俺たち妖怪と敵対する陰陽師か妖狩りの末裔だろう。やっぱり一緒にどこかで身を隠したほうが」
「いいえ。彼は放課後に話したいことがあると言っていました。札はおそらく本物でしょうけど、何も知らない一般人がたくさんいるところで使用するとは考えにくいと思います。狙いは放課後で生徒の大半が下校してからでしょう」
「そうなんだ。松雪さんは教室に戻るのもありだと思う?」
「はい。この学校で、いや、この辺りの土地で平和に暮らしたいのならば噂になるような派手な行動は慎むでしょうね」
「じゃあ教室に戻ろう」
教室に戻った頃には昼休みは半分ほど終わっていた。
良子と烏丸は別々に教室に入って行って自分の席に着いた。これで旧校舎で密談のようなことをやっていたことはバレないだろう。
今日は授業が少し長い日だから後2コマ分の授業がある。それが終われば優と対峙しなけれならない。
(私が頑張れば、支配から逃げ出せるの?)
優の口ぶりから一衝突は避けられないだろうと言うのはわかる。
(ずっと気づかないふりをして来たのだもの。内容によっては一発くらい平手打ちをしてもいいわよね)
絶対的な味方の登場は、良子のうちにずっとずっと隠れていたほんのかけらしかなかった反抗心に火をつけた。放課後の良子はただの従順な女ではない。きっと幸せを掴むために反撃をできる女になっているだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます