第8.5話・無題のドキュメント
そうして、私は外へ出た―――と言っても、地下室から出ただけだが。
そこに広がるは、一面畳と様々な絵柄が描かれた襖―――というものが置いてある部屋だった。地下室から出れたのだし、ここからも簡単に出られるだろう。そう、油断したのが命取りだった。
「んだぁ?何でテメェがそこにいるんだ?さっさと戻れ愚図!」
そうだった。ここは、ヤクザの屋敷だったのである。見回りぐらいいて当然と言える。しかも、相手は大人。今回は地下室のやつのように油断していない。
「もうそろそろ、出たい。ここの暮らしにはもううんざり」
「口答えしてんじゃねえよ。“想像力”―――『
“想像力”の最後に〈フェーズ2〉とあることから、私のものより優れているということが分かる。
「大人しくいるつもりはない。“想像力”」
私は、戦いに来たのではない。逃げに来たのだ。ならば……
「『
私は、“想像力”の無限に繰り返す力に着目した。『
「へぇ、速えな。だがよ!」
男は、その場から動く気配もなく、ただ立ち尽くしていたが、何やら、準備を始めたようだ。その準備が終わるまで、急がなくては。
しかし、時というのは実に無情なものである。私が、逃げる前に奴が準備を終わらせてしまった。
「まだ、目で追えるってぇ事はよぉ、まだ、トレぇんだよ。『
「グッ!」
私は、背中に強烈な痛みを感じた。刺されたような痛みではなく、鈍器で殴られたような痛みであった。そのような痛みの経験は人一倍あるので、痛みの種類で凶器が判別できるようになった。そして、今回の凶器は、「水」である。水――というより液体は、速度がある状態でぶつかると、硬くなるという。
意識も途切れそうになった時、誰かが部屋の中に入ってきた。
「貴様……少女にそんなことをするとは……やはりここの連中はクズばかりだが、落ちるところまで落ちたか」
「チッ、テメェかよ。テメェはもう、組を抜けたんじゃねえのかよ。特殊警察さん―――いや、
「今は、斎藤ではない。横山だ。それよりも、そこの嬢ちゃん。大丈夫か?無理すんなよ」
「よそ見してんじゃねえぞ!斎藤……いや、横山ァ!」
私を心の底から心配する人間を始めてみたが、それよりも、彼女の身に起こった変化が、衝撃的だった。それは……
「相変わらず煩いな。少し、黙っていてもらおうか」
目は太陽か、はたまた
「“想像力”―――『
それは、救世主であった。
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