第3話・一つ目の轍を踏む
なんで、あの人―『ル・リエー』運営をしているグループ『ティンダロス・ルルイエ・コンポレーション』の会長、空海無垢美が何故私と何を張り合っているのかわからない。
なんか同系統の能力だのなんだの言ってたけど何が…?
「おっと、自己紹介が遅れたね。私は空海無垢美だよ。」
「あっ、知ってます。」
ものすごく知っていることをもう一度教えられた。意味なし。
「おぉ、知っていたのかい。なら話が早い。」
無垢美さんは、フーッ、とため息をついた。
「…君は、〈フェーズ〉というものを知っているかい?」
「あっ、知っています。」
…なんでこの人知ってることしか教えてくれないんだろ。
「なんだ、知ってたのか。君、結構博識じゃないか。それじゃ、君は私が〈フェーズ〉何かわかるかい?」
何フェーズ目だろ?もしかしたら私と同じ〈基本フェーズ〉かも。
「えーと、〈基本フェーズ〉?」
「そんな訳がないだろう。君は、あまり本を読まないようだね。本はいいぞ。人間が生み出した知識の極みさ。」
どこの使徒だよ。そう思いつつも私は口にしない。気に入られなければならないからね!
「私は、世界で初の〈フェーズ3〉到達者だ。」
ん?んんんんんんんんんん?!アイエエエエエエ!!フェーズ3!フェーズ3ナンデ!?
コホン。少しお見苦しい所見せてしまい申し訳ない。しかし、〈フェーズ3〉…だとッ…!
この事実を知った途端、私の足が痙攣してきた。こいつは危険だ。早くこのオーディションを終わらせろ。私の本能がそう言っている。…バトル系かな?
しかし、私は逃げない。やらねばならないからだ。
そういえば、さっき「私と同系統の能力」って言っていたけど、どんな能力なんだろ?ちょいと聞いてみるとするかな。
「そういえば、貴方の能力って何ですか?同系統だとか言ってましたけど。」
「あぁ、私の能力かい?私の能力はねぇそんな人に言えるもんじゃないなだけどね。君には教えよう。」
そういうと私の近くまで来て、耳の近くでこう囁いた。
「私の能力は“
少し、聞き取りづらい所はあったが聞こえた。
「それじゃ、少し見せようか。」
そういうと無垢美は、結構でかい机を持ってきて手をかざした。
「『虚無転送』」
そう言うと、パっと音もなく突然消えた。
私は一瞬考えるのをやめた。
思考が正常になり再開されると、私は彼女の能力について考えた。
『虚無転送』と言っていたことからワープ系、又は異空間系だ。私の能力も広い視野で見ると、異空間系だ。と、なると彼女の能力は異空間系だ。…今度辞書買って来よう。
「もしかして、貴女の能力って『異空間系』ですか?違っていたら謝りますけど。」
そう言うと、無垢美は、ほぅ…、みたいな顔をして、
「へー、まさか私の能力がモノの数秒で何系統か分かるとは。君結構才能あるねぇ。いや
ぁ、もうウチに欲しいくらいだよ。」
解析能力ってスゲー。これでほとんど合格は約束された!
「それじゃぁ…!「いいやまだだ。」ん?」
私の望みはそこで打ち砕かれた。
「どうゆう事ですか?」
私の問いに対して、何だ、これについては気付いているはずだと思っていたのに、みたいな表情を見せた。この人、顔に思ってること出易いな。
「そりゃぁそうだろう。私の能力を見抜いて解析する能力は認めよう。しかし、まだ君はまだ入ることができない。私が求めている人材は、高い『解析能力』、少なくともフェーズ1に到達している『想像力』。これを持っている人材だ。君はその片方しかもっていない。」
あー、そういう事ね。完全に理解したわ。
要は、『フェーズ1』に行けばいいってことね。分かった。理解理解。
…まぁ、理解とできるかは別なんですけどね。
「…それって、今やらないといけないですか?」
今は、まだ出来ないけれども延期さえしてもらえれば何とかなる!
しかし、本日2回目の希望は次の一言で砕け散った。
「ああ。今、ここで見せてみろ。大丈夫だ。君の解析能力は気に入っているから、ここで失敗してもスタッフ、君が望むなら、ここのプロデューサーでも良い。しかも待遇は一番いいぞ。勝っても負けてもおいしい勝負だろう。さぁ、やれ。」
Oh…。それはそうだ。利益だけを求めるものにとってはこれ以上ないおいしい話だといえるだろう。しかし、そんなものに釣られる私ではない。
私の夢はアイドルなのだ。ここで諦めてはならない。
そうだ。父さんも言っていた。
『今回ダメだな。って思った時に限って成功するし、ヒットする!って思った時に失敗するんだ。要は確信しないこと。失敗するとも、成功するとも信じない。どんな結果になっても諦めない。これが重要だと思うんだよ。』
…この世は、ホントに「これだ!」と信じる奴とか正直者が馬鹿を見る。そういうことを私は知っている。友達を見て何回も実感している(主にテストで)。
だから、私は諦め悪く生きている。
「私だって、やろうと思えばできるんですよ!“想像力”は諦め悪い奴についてくるって!父さんは言っていた!“想像力”の本当の意味を知れば何とかなる、って…って?」
私は、一瞬理解ができなくなった。目の前のテーブルがなんだか分からないけど無くなっていたのだ。
そして、世界が銀色―白黒―に染まっていた。
言葉通りに。
そして、無垢美以外の人物の色も銀色に染まり動いていない。
まるで時が止まったかのように。
私は、思考が止まっていたが不意に無垢美の方を向いた。
そして、無垢美は、パチパチと拍手をしていた―少し期待外れな顔をしていたが―。
「ふむ。素晴らしい。しかし、欲を言えば〈フェーズ2〉まで進んでほしかったが、仕方がない。あれまでは沢山の鍛錬がいるからな。」
そう言うと、無垢美は、とんでもない衝撃発言を放った。
「まぁ仕方がない。可愛い『姪孫』の頼みだ。特別に合格にしてやろうかな。」
ん?んんんんんんんんんんんん?
「『姪孫』?」
「あぁそうだ。」
「私から見て、貴女が『大伯母』?」
「そうだ、若いだろう?」
若すぎやしないか?見た目20代だぞ。
「あぁ、よく前まで遊びに行っていたのにな。覚えていないなんて…。うぅ、悲しいねぇ。ひどい奴だな『えーちゃん』。」
「『えーちゃん』!?」
変な愛称つけられてたんだけど。
「そう『えーちゃん』。いつもそう呼んでいたぞ。それすらも覚えていないとは、やはりあの家に来ていた時の記憶がもうないのか。結構来ていたんだけどな。」
「あの家?」
「あの家はあの家だよ。青森にあったあの屋敷みたいなところさ。」
あぁ、よく来ていた親戚ってのはこの人のことだったか。
「…さて、解説はここまでにして。唐突ですまないが私の話を聞いてくれないか。」
超唐突だな。その前に私はこの白黒の解き方が知りたいんですけど。
「良いですけど、条件があります。」
「なんだ?」
「この白黒の解き方教えて下さい。」
「良いだろう。しかし、こちらからも条件を出させてもらう。」
そちらからも条件が。何なのか。
「私の話を聞いてくれ。」
畜生!何でだ!
「はぁ…。良いですよ……」
「あっ、それと。」
「まだ何かあるんですか?」
「敬語は無しでいい。たとえ立場上違っても親戚だからな。」
はい。お許しをいただきました。敬語を外させてもらいます。
「了解。敬語やめるわ」
「フフッ、話し方は私とは似ていないな。…では、聞いてくれ事の顛末を。何故私がこの何十年も前の姿で生き続けているのかを。」
そして話は唐突に始まった。
――あれは、もう何十年昔のことだったか。
あぁ、そうだ確か…78年前だったな。
1963年8月13日に研究者の親父、一条道治と親父の助手だったお袋、一条智空の間の3兄妹の二番目に生まれた。
その頃はいたって普通だったんだ。
こんな私でも遊んでくれる友達がいた。怪談だってした。
――63年前
ここは、東北、青森県。
中心街に近い浜田。
そこのある公園で、小さな密会が開かれていた。
「して、どうするか…『前藤』?」
そう問うのは若かりし頃の空海無垢美―一条無垢美だ。
そして、その問いに答える『前藤』と呼ばれた人物が無垢美のほうへ向く。
「して、と言われても何が?」
そう答える―どちらかと言うと疑問形で返している―のは『前藤』もとい前藤風弁である。
その返された疑問形に答える者が無垢美以外にもう一人いた。
「ワッツ!?して、と言うのはこの前の計画のことでしょう。フウベン=サンはつい先週のことも忘れてしまうほど馬鹿なのですか?」
そう少し英語交じりの喋り方をする毒舌少女は、フラン・ハーラヴ・ノワール。『ノワール』とあるがフライン―フランス・スペイン共同合併国人ではなく、北アメリカ―北アメリカ合同合衆国人。和名は黒井富蘭。通称『黒』。
しかし、無垢美はフランと呼ぶ。
「そう言うフランは覚えているか?」
「勿論覚えていますとも!『フウベン=サンの弟の彼女出来たよパーティー』ですよね。」
「そうだ。やはりフランは優秀だ。しかし、これに比べて奴は…。」
「一条。ちょっと屋上行こうか。」
風弁がキレているが無垢美は気にしない。そもそも相手にすると負けだと思っている。
理由は、マジで屋上に連れて行かれて顔面ボッコボコになるまで殴られるからだ―何故それを知っているかと言うと実際にやられたからだ―。
「それでは忘れていた前藤の為にフラン、説明を頼む。」
「イエス! マイフレンド!頼まれました!と、言う事で弟の事も忘れていた馬鹿で薄情者のフウベン=サンの為に『フウベン=サンの弟の彼女出来たよパーティー』の概要を説明しますね。
概要としては、まず8月6日午後6:00にフウベン=サンの家に弟君とその彼女に挨拶と言う名目で来てもらいます。そして、プレゼントと言いフウベン=サンが箱を開けると私と無垢美さんが飛び出て来ます。そこからパーティーをスタートさせます。8月6日はフウベン=サンのご両親が結婚記念日で旅行に行っているので安心してパーティーを開けます。分かりましたか?フウベン=サン。」
「よくそこまで調べることができたな黒。情報提供したの僕だけど怖いわ。」
それもそのはず。何故なら、フランは『ノワール・エルランド財団』の御曹司なのだから。
ここで、『ノワール・エルドラド財団』について解説しよう。
『ノワール・エルドラド財団』は、通称『NEF』と略される。この財団は伝説上の事件、生物、力を再現しようとオリジナルの理論を見つけ、そこから軍事兵器『ミョルニル』を第二次世界大戦中に開発した事から『世界一化学力がある団体』として世界記録にも認定され、そこそこの知名度を誇っている。
実は、原子炉の基になったのが軍事兵器『フォトンアトム』だったりする。
まぁ、そんなにデカい組織なら諜報部だのなんだのもあるわけで。
「私の所の諜報部にかかればフウベン=サンの家の事情なんか筒抜けなのです。さぁ、恐怖しろ!私の諜報部を!」
「いや、そこは『私』をだ。そうした方が威圧感が増すぞ。」
「そうですね!では、改めて…さぁ、恐怖しろ!私を!」
「…僕は一体何を見せられているのかわからないんだけど。まぁ、お前んところの諜報部はすごいよ。諜報部は。お前はどうか知らないけど。」
「フウベン=サン。貴女は私を侮辱した。万死に値する。」
「ホントに殺りそうだから怖いんだけど。」
「前藤。お前が言えたことではない。お前が屋上に来いと言ってその後どうなったか忘れたのか。」
「忘れていないさ。今回もそうする気だったからな。ということで屋上行こうか。」
「まて、考え直せ前藤。私がフランとお前を比べたのは謝ろう。しかし、それだけじゃないか。私が謝ればどうってことn…おい。なんだそれは。その槍はなんだ。」
「ん?これ?これは、この前NEFの保管庫に行った時にちょいと盗ってきた『ロンギヌスの槍』を頑張って解析した。名付けるならば『アナザーロンギヌスの槍』かな。性能は指定した相手を指定した座標に槍先に引っ掛けて運ぶ性能だ。さて、疑問には答えた。さぁ、屋上に行こうか一条?」
「待て、待て前藤、ちょ、マジで!前藤いいいいいいいいいいいいいいいいい!ヤメロオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」
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