Yくん探してます

島丘

Yくん探してます

 わたしの好きな男の子は、今から一ヶ月前、下校中に行方不明になった。

 その日からテレビや新聞でYくんの顔を見ない日はなかったし、学校にはたくさんの記者が訪れた。テレビのカメラを向けられて、たいして仲良くもないのにYくんのことを話す子もいた。

 Yくんのことを知らないくせに、泣いてみせる秋穂ちゃんも三奈ちゃんも大嫌いだ。

 通学路にある電柱には、たくさんの紙が貼られた。


『Yくん探してます』


 Yくんの写真の下には、電話番号が書かれている。どんな些細なことでもいいから情報提供してほしいとも書かれていた。

 写真のYくんは笑顔でピースをしていた。開いた口からはガタガタの歯が覗いている。

 わたしは紙を一枚剥がした。写真の部分に折り目がつかないように折り畳む。

 家に帰ると、わたしはYくんを切り取った。小さくて薄っぺらいYくんが手に入る。

 手に入ったYくんは引き出しの中の宝物入れに入れた。お母さんにもらった、可愛いお花柄の紙箱だ。Yくんがわたしの手の届くところにいる。そう思うと嬉しかった。


 結局Yくんは、翌日に遺体で見つかった。

 わたしはそのことを受け入れられなかった。大好きなYくん、かわいそうなYくん。

 Yくんのためにしてあげられることは何だろうと考える。

 そうだ、きっと一人で寂しいはずだ。


 わたしはたくさんのお客さんを招くことにした。昔の新聞をいろんなところでもらってきて、Yくんと同い年くらいの子を見つける度に切り取った。

 今や箱の中は大所帯だ。AちゃんやKくん、MくんにSちゃん、RくんにHちゃんなど、たくさんのお客さんがいる。


 きっとYくんも喜んでいるだろう。そう思っていた。

 けれどある日、なんとなく箱の中を引っくり返すと、Yくんがいないことに気付いた。

 そんな、どこに、一体どこにいるの?


 わたしは新しい貼り紙を作って、通学路の電柱に貼り付けた。

 ちょうど一年前、わたしがYくんを剥がしてきた電柱と同じものだ。


『Yくん探してます』


 Yくんは机の下からぺしゃんこになって出てきた。


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Yくん探してます 島丘 @AmAiKarAi

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