23.即興、不意打ち
さっきまで盛り上がっていた会場とはまるで別の空間のよう。
音一つない静寂。
床に転ぶ俺に向けられた観客達の視線が痛い。
なにかしなければ。
脳みそはフル稼働してるのに、打開策がいっこうに浮かばない。
終わりだ。
劇は、失敗してしまんだ。俺のせいで。
「大丈夫かい?」
差し伸べられる手。
見上げた先ーー夢子の瞳はまだ光を失っていない。
まだ、終わってない。
そう、言われた気がした。
......ごめん。俺、一瞬諦めかけてた。
差し伸べられた手を取り、立ち上がる。
おまえが諦めないなら、俺も諦めない。
どうすりゃいいかわからんが、やれるだけやってやる。
立ち上がると同時、腹の底に重たく響く、鐘のBGMが鳴った。
「12時の、鐘の音.........」
「王子様、私行かなきゃ......」
「そんな足でどこに?」
「この姿は魔法の姿。12時になれば魔法が解けてしまう......そうしたらあなたは私を嫌いになる」
「そんなことはないっ! 僕は君を愛してるっ!」
「.........さよなら」
「待って!」
振り解いた手を再度王子に掴まれる。
「魔法の力なんて関係ない。僕は君を愛しているっ!」
「そんなの嘘! 口ではいくらでも言えるもの! 私は......私は」
「これでもそう思うかいっ?」
は?
息が、止まった。
腰に回された夢子の腕。
唇を包む、柔らかい感触。
夢子の髪が
キス、している。
夢子と、オレが?
離れた唇。水っぽく光る夢子のそれがゆっくりと動いて言葉を
「言ったろ? 魔法の力なんて関係ない。僕は、君を愛してる」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます