20.トラブル





「うはぁーっ! たい焼きに、焼きそば、ポテトフライまデ! ここは楽園ですかぁあああっ!?」


「こら落ち着けアリス。本当に迷子になるぞ」



 目を輝かせて屋台から屋台へ飛び移って商品を買い占めるアリス。


 小学生ぐらいの子ども達がアリスの買いっぷり見てドン引いている。



「てかお前、もうすぐ本番なのにそんなに食べて大丈夫なの?」


「んっ! 全然大丈夫ダ! アタシの胃袋を舐めるなヨ?」


「別に舐めんよ汚い」


「失礼だナ!? ふーんだ。そんな雄二には分けてあげなーイ」


 

 別に欲しくもないイカ焼きを振り回してそっぽを向いたアリスに思わずため息が漏れる。



「まあいいんじゃない、アリス楽しそうだし。好きにさせてあげなよ。ね?」


「夢子、お前も余裕だなもうすぐ本番だってのに」


「まあねー! 誰かさんのおかげでたくさん練習したし!」



 パチンとウインクを飛ばしてくる夢子から視線を逸らす。



「感謝しろよ。ほんと練習し過ぎて、今すぐにでもシンデレラやれるレベルだぞ.........」



 本当に辛かった。


 あれから今日まで爆笑する母親の前で毎日ガチシンデレラを演じるという屈辱の日々を耐え抜いたオレに拍手してあげたい。



「お疲れ雄二。そんな雄二にほれ、チョコバナナをやろう」


「和馬.........おまえ、マジでいいやつな。ありがと」


「いいよ、これぐらい。しっかしまぁ、みんな数日足らずでよくここまで準備したよな」


 

 周りの屋台に目を向けながらもらったのと同じチョコバナナをかじる和馬に茜が頷く。



「そうね。私もそう思うわ。だからこそ、私達の劇も成功させないと。そうでしょ? 雄二君」


「そうだね。みんな夜遅くまで学校に残ってがんばったんだ。むくわれなくっちゃね」


「はぐっ!?」



 不意にアリスが変な声を上げてうずくまった。



「アリス!?」



 さっきまで元気に飛び回ったていたアリスに駆け寄り顔を覗き込むと、真っ青だった。



「どうしたアリス!? おいっ!」



 うめくだけで返事がない。


 只事じゃない。

 額に大量の脂汗あぶらあせを浮かべたアリスがゆっくりと唇を動かした。



「ユージ......お腹、痛イ.........」





 


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