18.ナイトな夢子
「......なーんか、怪しくね?」
「そうだな」
ハケに付けた赤のペンキを和馬と一緒に段ボールに塗りたくりながら配役決めに盛り上がる女子の輪に視線を送る。
男子は全員、大道具作りや当日の音響や照明といった裏方担当。
キャストと衣装作りは全員女子が担当する事になった。
この異様な配置も全て夢子のアイディアだ。
「なに考えてんのかわかんないけど、ま、楽だしいいや。当日一緒に出店回ろうぜ」
「それはいいんだけど。てか、あの日以降、夢子ちゃんとちゃんと話したのか?」
「んー、まあ一応」
「夢子ちゃんなんて?」
「もう我慢しないからって。意味わかんなくね?」
忙しくハケを動かしていた和馬の動きがピタッと止まった。
「どったの?」
「.........この地域文化交流会、絶対よからぬことが起きるぞ」
「あのー、シリアスな表情のところ悪いんだけど、鼻に赤いペンキついてんぞ。だっさー」
「うっ、うるせー!」
「ほれ、動くな」
ハンカチで和馬の鼻についたペンキを
上手く
「.........ありがと」
「ぷくっ......うん、いいよ」
照れる和馬にとりあえずサムズアップ。
おもろいから、しばらく放っておこう。
「おーい男子共ー! キャスト決まったよ!」
盛り上がる女子の輪の方に男子の視線が注目する。
どうやら配役は黒板に書かれてるらしい。
「シンデレラがアリス!? 王子様が夢子ちゃん!? あ、ありえん。雄二、これ絶対なんか裏あるぞ!」
黒板を
そんな事より、俺はてっきり
「それではこれから衣装のための
相変わらずよく通る茜の声。
しかしさっきからやたら女子達がクスクス笑っている気がする。
「な、なあ雄二? なんかさっきからみんなが俺を見て笑ってる気がするんだけど、気のせいかな?」
「え?」
あ、すっかり忘れてた。
ジロリと睨む茜と目が合う。
「んんっ! それと坂梨君、そのふざけた鼻、キレイにして方がいいわよ」
「ふざけた?」
スマホを取り出した和馬がインカメで自分の顔を見た後、視線が俺に向けられた。
鬼だ。ピエロならぬ鬼が俺を睨んでる。
「ごめんて。悪気はなかったんだって。ペンキが伸びちゃって」
「だったらさっさとそう言えやぁあああっ!」
追いかけてくる和馬から逃れる様に教室から飛び出した。
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