17.シンデレラ




「そろそろ、地域文化交流会の出し物について考えよー」



 ざわつく教室。

 何とか仕切ろうと手を打ってみんなの注目を黒板に集めようとするが、静まる気配は全くない。



「はいはーい! ユージ、地域ブンカ交流会ってなんダ?」


 そんな喧騒けんそうしずめたのは、ブロンドの髪をなびかせ、元気よく立ち上がったアリスだ。



「そうか、アリスは知らないよな」


「雄二君、私が説明するわ」


「おお、頼むよ茜」


「地域文化交流会と言うのは、年一回、地域の他の学校や様々な施設と交流するイベントです」


「おおっ! それは面白そうだナ! えっと......お祭りみたいなものカ?」


「まあそうですね。そう思ってもらって間違い無いです。一日限りなのですが、市を上げて大々的に行われるイベントなんです」


「市のイベントなのカ。みんなの顔を見るニ、みんなはお祭りの事、知ってるのカ?」


「ああ。大抵の人は小学校ないし、中学で参加したことがあるはずだ」



 俺の答えに頷いたクラスメイト達の一人が手を挙げて発言する。



「恒例の出店とかでよくねー? 準備がちょっと面倒いけど、当日楽だし」



 いいじゃーん! と盛り上がるクラスに俺と茜はため息で答える。



「ごめん、今年は中学組が出店系をやるから高校組はダメらしい」


「それなら、劇とかどうかな?」



 不満の声が至る所で噴出する教室で、小さく手を上げた夢子が発言する。



「あ、やっ、無理にとは言わないけどぉ! 準備大変だけど、当日一回劇やるだけだし、それ以外の時間はフリーだから結構遊べるかなって!」


「それいいかも」


「出店以外に他のアイディア浮かばないしね......」



 慌てた様子で手を振る夢子にクラスからポツリポツリと賛同の声が上がる。



「雄二君、私も夢子ちゃんの意見に賛成。正直出し物系だとやれる事も限られるし」


「そうだな......みんな! 夢子の意見どう思う?」



 問いかけにみんなが拍手で答えてくれる。

 そんな拍手の中、元気な声を上げて手を上げたのはアリスだ。



「はいはーい! 劇やるんなら、シンデレラ! シンデレラがやりたイ!」





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