07.ファミレス会議②




「で、本題なんだけど」



 夢子の入れてくれたアイスコーヒー(甘め)を口に含んでみんなの顔を一瞥して頭を下げる。



「親睦会の出し物、マジで決めたいので協力して下さい」


「最初っからそういえばいいんだよ! ねぇ秋名ちゃん?」



 顔を上げて横を向くと、微笑んだ茜がこっくりと頷いていた。


 茜さん、もうすっかり夢子と友達だね。てかこの一瞬で俺より仲良くなってない?


 って、あーっ! 夢子のやつ、茜と連絡交換してる! いいなぁ......



「おーい雄二?」


「ナニカナ? カズマクン.........」


「なんだその片言。元気出せって。こんなのいつもの事だろ?」


「いつものこと、だと? 知ってるよそんなこと。こうなったのは誰のせいだと思ってやがる」


「ご、ごめんて。で、雄二達の中ではなんか考えあるのか?」



 ふてくされてても仕方ないので、真面目に話を進めることにする。



「あんまり具体的な案はないんだけど、みんながみんなの事を知れる、楽しい企画にしたいとは思ってた」


「なんだ。ちゃんと考えてんじゃん」


「で、だ。もし茜がよかったらだけど、夢子と雄二が言ってくれた案を採用したい」


「ええっと。クイズ大会とバーベキューパーティだったかしら」



 スマホから顔を上げて少し首を傾げる茜に頷く。



「二人の言ってくれたことを掛け合わせたら面白い事が出来そうだなって思って」


「えーなになに? 面白そう! 教えて教えて!」



 テーブルに身を乗り出して俺に顔を近づけてくる夢子にわかるように鞄から取り出したノートにメモ書きする。



「適当にグループ作ってさ、食材をかけてクイズ大会するんだよ。食材が景品ならみんな真剣になるし、グループでの会話も盛り上がるかなって」


「へーっ! いいじゃんいいじゃん! 面白そう!」


「食材が一つのグループに偏らないような配慮は必要だけれど、面白そうね」


「ごめん。全然関係ないんだけど、茜ちゃんの座る姿勢、めっちゃ綺麗だね。あ、ごめんねっ! 勢いで名前で呼んじゃった!」


「べ、別に言いわよ。ありがとう。桜木さん」


「私のことも夢子でいいよー!」


「うん」



 夢子め、着々と茜の信頼を積み重ねてやがる。


 しかし照れる茜、マジ可愛い。普段のクールさと相まってマジギャップ萌え。



「雄二くん、どうしたの? 私、何か変な事言ったかしら?」


「え、なんで?」 


「さっきから私の事ずっと見ているから」


「あっ! ごめん!」



 いかん。無意識のうちに照れる茜を凝視ぎょうししてしまっていたようだ。



「茜ちゃん、気をつけた方がいいよ。雄二、中学でもプレイボーイって言われてたし」


「おい夢子!?」


「.........確かにそうね。彼、女癖悪そう」


「茜さん!?」



 茜の目が細くなったと思った瞬間、スッと半身分、俺から離れた。



「待って待って違うから! 誤解しないで! こらぁあああっ! 夢子ぉおおおっ!」


「あははっ! 冗談じゃん。じょーだん。そんなに怒らないで。ね?」


「............てめぇ、その辺の男にならそのあざとウインクでなんとかなるかもしれんが、俺には火に油だぞ。後で覚えとけよ......」


「やーん! こわーい! 茜ちゃーん!」


「よしよし。雄二くん、あんまり夢子ちゃんをいじめないで」



 ちょっと!? いじめられてるの俺でしょ!?


 終わった。昨日の放課後に感じたあの好感度、ぜーんぶ消し飛びましたわ。


「.........その、マジでごめん。俺、夢子ちゃんをあなどってたわ。親睦会、本気で手伝います」



 ガールズトークに花を咲かせる二人を横目に申し訳なさそうにつぶやいた親友に、俺は乾いた笑いを送ることしかできなかった。



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