03.どうしても俺が幼馴染と別の高校に行きたかったワケ
「
「よかったな雄二、秋名さんと同じクラスで」
「そうなんだけど、やっぱりすげえ人気だな」
「まあ、入学式でも目立ってたしな」
入学式後、戻った教室で始まった自己紹介。
トップバッターの秋名さんの
ちなみに俺は
「ねえ雄二」
「なんだよ夢子」
「あの子のこと、好きなの?」
和馬の背中から聞こえた冷たい幼馴染の声から逃れるように和馬の机に突っ伏して隠れる。
「やめろ雄二。それやるとまた俺が夢子ちゃんに......いてっ!? だから夢子ちゃん、その背中つねるやつやめてっていつも言ってるよね!?」
中学の時からずっとこの並び。
「進学したのに変わんないな、俺たち」
「進学程度で変われたら誰も苦労しないって。ほら雄二、そろそろお前の番だぞ」
和馬が首で前向けとジェスチャーするのと同タイミングで先生に名前を呼ばれて立ち上がる。
「佐伯です。佐伯雄二。みんな一年間よろしく」
複数の女子の甲高い声と一緒に拍手が巻き起こる。
あ、秋名さんと目が合った。しかも微笑んで拍手してくれてる。嬉しい。
ーーバシンっ!
周りに軽く会釈して座ろうとした瞬間、背後で起こった謎の爆裂音に身体が飛び跳ねた。
「桜木夢子です」
振り向くとなぜか夢子が立ち上がっていた。
さっきの物騒な音は、どうやら手のひらを机に叩きつけた音のようだ。
爆裂音の後に訪れたのは沈黙。
夢子がもたらした嫌な間が、教室を支配している。
「あ、あのー夢子ちゃん? 順番的に雄二の次は俺なんだけど......」
「あーっ! ごめんね! ごめんねっ坂梨君! 緊張して順番間違えちゃった!」
沈黙を破った和馬に、夢子が胸の前で手を合わせて慌てた様子で何度も頭を下げる。
「かわいい......」
「桜木、ドジっ子なんだな」
「
あのあざとさはやつの
こいつ、わざとやってます。
「幼稚園の頃からずっと雄二の後ろだったからかな?」
なおも照れた表情(嘘)で話し続ける夢子にクラスメイト達が反応する。
「えー! 佐伯君と桜木さんって幼稚園からずっと一緒なの?」
「美男美女ペアじゃん」
「入学式前も仲良さそうだったし、ひょっとして二人とも付き合ってるの?」
「よっぽどそうでしょ!」
「うんうん、そうじゃないならわざわざ同じ高校選ばないし!」
「リア充爆ぜろ」
「待て待てみんな! 俺と夢子は別にそんな関係じゃない! ただ家が隣同士ってだけで......」
『家が隣同士!?』
「や、その、親が仲良いだけっていうか......」
『親公認!?』
何故そうなる!?
話せば話すほどクラスメイト達の間違った
「ああ......」
さっきまで微笑んでくれていた秋名さんは無表情になり、そっぽを向くように前を向いてしまった。
「やめとけ。それ以上話さない方がいい。それこそ夢子ちゃんの思う壺だ」
俺の肩に手を置いて和馬が首を横に振る。
いつもこうだ。小学校でも中学校でも。
こうなりたくなかったから夢子と違う高校に通いたかったんだ。
俺と夢子は付き合ってる。
どれだけ......どれだけどれだけどれだけどれだけどんだけ剥がしても剥がさないこのレッテル。
このレッテルのせいでまともな恋愛をした事がない。
恋愛がしたい。
だから夢子とは違う男女共学の高校に通いたかったのに......
「夢子めぇ......」
チロっと俺に向かって真っ赤な舌を出す幼馴染。1ミリも可愛くねぇ。
「まあその、終わったな。お前の夢見た高校生活」
「くそぉ......」
高校でもまたこれか。
夢子がーー幼馴染が俺の恋路を邪魔してきやがる。
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