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歩いていてたまに思う。
どうして人は人の目を気にして黙りこくってるのに、蝉は人の目を気にせずミンミンゼミゼミ鳴きやがるのだろうと。
蝉だって人目を気にして外で鳴くときは控えめに鳴くとかできねえのかよ。
とかなんとか考えてるうちに頬の汗の玉達が順々に落ちていく。
汗の原因は真上に居座る太陽だけではない。
今向かっている学校が坂の頂上に居座っている際で、全校生徒が問答無用で坂道をのぼらされているのである。
疲労で蝉にまで当たり散らかしているこの男もこの学校の生徒である。
彼はとにかく苦労することが嫌な普通の青年であった。
勉強もやりたくないし、将来の為に頑張ることは無駄だと考え、誰かを助けるなんて面倒なことは二度としないと決心した。
何も考えずにベルトコンベアに流されるように生きていければいい。それが幸せだ。
そんな感じで、彼の思考の99%は事なかれ主義に支配されていた。
セミに文句を言いながら彼は坂の真ん中ぐらいまで歩いた時だった。
「ドタッ」
彼の後ろで誰かが倒れたようだ。
後ろを振り向いてみると彼は苦い顔をした。
朝から会いたくない奴に会ったからだ。
「…」
特に恥ずかしがることもなく、すっと起き上がる。
膝に擦り傷を負っているが、表情ひとつ変えずに歩き出した。
彼女は常日頃から無表情を貫き、声を発さず、
昼休みになるとどこかへ消え、学校の外で彼女に会った人はいないとされている。
まさしく幽霊であり、同学年の生徒達もそう馬鹿にしている。
そんな彼女が歩き出すの確認してから、彼はすぐに前を向いてまた坂を登り始めた。
彼は彼女に関わろうとしなかった。
Made-up 戦士 @kosodoroyaziuma
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