これで分かったろ?
少しして冷静になった訳だが、やはり吸血鬼というのはおかしいだろう。そんな奴がいたらもう人間死にまくりの瀉血した死体が転がって吸われた人間がまた血を吸ってねずみ算式に増えていって人類滅亡〜なんてことになってるだろうし。ひとまず自称、ってことで。
そんなこんなで自称吸血鬼を家に入れた俺は、彼女とテーブルを挟んで向かい合わせに座る。こんな時、親元を離れて一人暮らししていて良かったと感じる。まあ、大学生にはそれが当たり前なわけだが。
「で、だ」
「おう」
俺の雑な話の切り出しに、さてらと名乗った少女は相槌をうつ。
「吸血鬼ってマジ?」
「マジだよ」
「あ〜...」
痛い子か〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜...
いや分かるぞ?見たところは高校生ぐらいに見えるしまあ遅めの厨二病なんだろう。
俺にもあった。中学時代、自前の草刈り鎌にブラッディ・ローズと名付けて...
。。。。。。。
。。。。。
。。。
思い出さないことにしよう。身震いする。主に鳥肌的な意味で。
「おい、今痛い子だって思わなかったか?」
「思った」
「喧嘩なら買うぞ」
おっと。どうやらこの厨二...吸血鬼さんを怒らせてしまったらしい。おお怖い怖い。
「じゃあ証拠とか...ホラ、日光とか」
「肌がヒリヒリするし疲れる」
「ほな肌が弱いんやろなぁ〜」
「吸血鬼だからなんだけど」
「じゃあさ、ニンニクとかどう?」
「アブラマシマシニンニクカラメヤサイマシマシ」
「ほなただのラーメン好きか〜〜〜〜」
「なんでニンニクなわけ?」
「なんかよくあるじゃん。ニンニクが弱点ってやつ」
「ふーん」
「杭で心臓を突かれたら死ぬ?」
「そんなの誰でも死ぬだろ」
「ごもっとも」
そりゃそう。仮に今心臓を突いたらどっちにしても死ぬし俺、殺人犯になっちまうよ。
「あと、十字架とk」
「もういい。そんなに証拠証拠言うんだったらさ、見せてやるよ」
彼女が低い声でそう言った瞬間、俺は首筋に痛みを感じた。目の前にいたはずの少女はもういない。痛みのした方に目をやると至近距離に少女の横顔。
さらりとしたロングヘアで気がつかなかったが、尖った耳があった。そして一番の問題は、彼女が俺の右肩に噛み付いていることだ。そして痛みのする場所には、明らかに人のものとは思えないサイズの犬歯が。
呆然としていると、彼女は俺の肩から離れた。
そこには残ったのは血が失われてくらっとする感覚だけだった。
「これで分かったろ?本物の吸血鬼だよ。」
マジか。
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