ゔぁんぱいありずむ!

九条 楓

吸血鬼じゃないの!?

『精神病の一種ですね』

『お医者様に相談してみればいいのではないでしょうか?』


俺、待夜 来人まちや らいとの性癖って、やっぱりおかしいらしい。

小さい頃から人の首筋がやけに気になった。

紅色がやけに美しく見えた。

今ではまあ...ペロリだ。しょっぱくて美味しい。

いわゆる吸血嗜好ヴァンパイアフィリアってやつだ。そんな俺には願望がある。


彼女がほしい!あわよくば首筋のちょっと横!....のなんか鎖骨の上の柔らかい部分から血を吸わせてもらいたい!


などと思っている。今のところこれを知ってるのは自分と親友、あとネット上で喋る数人だけだ。だれかこの欲求を満たしてくれる人、それも美少女、いねーかな。居ないな。なんて思っていると玄関のチャイムが鳴った。今は夜の11時、どう考えても宅配が来るような時間ではない。


「誰だよこんな時間に...」


ウンザリしながら扉を開ける。そこで俺を待っていたのは...


「うぃ~す。血のお届けで~す」

「かっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっわい。」


眼の前に、気だるげな顔をした赤目銀髪、超絶美少女がそこにいた。

とは思ったけれどどう考えてもおかしい。今なんて言った?血のお届け?ナンデ?可愛さに気を取られたがおかしいだろ。

俺が混乱していると、目の前の少女が先に口を開く。


「え~っと、セクハラされた気がしたんだけどもそれは置いといて、血、足りてない言って聞いたから持ってきたよ。」


脳が理解を拒んでいる。まず血を持ってくるってなんだよ。

それでも疑問を一つ一つ解決するために口を開く。


「えっと...あなたは?」

「雨夜さてら」


彼女は見た目に違わずだるそうに、ぶっきらぼうに答える。


「血って?」

「吸いたいって言ったでしょ?だから足りてないのかなっておもって」

「なんで?」

「だって吸血鬼なんだろ?」

「なんて?」

「吸血鬼。飲むだろ?」

「飲まないけど?」

「なんで?吸いたいって言ったじゃん」

「なんで思考が読まれてるの?」

「読めないの?」

「読めないよ?」

「吸血鬼でしょ?」

「違うけど」


問答...といっていいかすらわからない謎の会話を続けて、沈黙が走る。

先に口を開いたのは、さてらと名乗った少女の方だった。


「吸血鬼じゃないの!?」

「違うけど!?」

「血が吸いたいんでしょ?」

「そうだけど食事じゃないし」

「首筋の横って言ったら定番の...」

「それは性癖」

「でも心の底から血がほしいって思ったでしょ?」

「思ったけど...」

「それでも人間なの?コウモリの変異種とかでなく?」

「それはこっちのセリフでは?」

「誰がコウモリだ」


この子、見た目とテンションに反してグイグイ来るな...

あと俺のほうがコウモリじゃないと思う。


「ってことは君は...血が好きで、吸いたくて、それがテレパシーで漏れちゃうぐらい強い、人間?」

「まあそういうことに...」

「ほへ~~~~」


そう言って彼女は俺の体をまじまじと見る。これ、結構恥ずかしい。


「あの...」

「んあ?」

「あんまりジロジロ見られると恥ずかしいと言いますか...」

「あぁ~すまんすまん。血を吸いたい人間なんて初めて見たもんで」

「そっくりそのまま返すよ。アンタはなんなんだ」

「あたし?あたしは見ての通り吸血鬼だけど?」


ああ~、ね。やっぱりね。まあ、いるわな。火のない所に煙は立たぬっていうし。


「...じゃね~よ~~~~なんでこんなのが現実にいるんだよ~...死ぬの?俺死ぬの?人間の身で吸血鬼の存在を知ってしまったな!みたいなこと言われて今日死んじゃうのか~?」

「いや、別に殺す気はねーよ。とりあえず中に入れてくんね~か?座りて~」

「まあ、いいですけど....」


ようやく落ち着いてきた俺は...

敬語を取り戻した。

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