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「リッ君何飲む?」

「じゃあコーヒーで」

店長は僕が答えるより早く、自販機のコーヒーのボタンを押していた。彼は下の取り出し口に落ちてきた熱々の缶コーヒーを僕に投げて寄越す。僕の好きなメーカーの、僕の好きな無糖だった。

「寒いね」

ガランガランと落ちてきたホットココアを拾い上げながら、店長が言う。僕はプルタブが開くパシッという音と共に「そうですね」と答えた。

しばらく、二人で並んで茶色い液体を流し込んだ。冷え切っていた身体が内側から温かくなった。一足早く飲み終えた店長が、自販機の横のゴミ箱に缶を投げ入れた。

「もう四時か。さすがに疲れたね」

「そうですね。荒木さんがいなくてよかったです」

僕は明日の授業はどうしようかと悩みながら答えた。これから事後処理もあるし、家に帰る頃には完全に朝になっているだろう。学校をサボっても咎める家族はいないので、帰ったら昼までゆっくり眠ろうと思う。

「あ、連絡来たよ。無事に隔離されたって」

「そうですか」

スマートフォンを操作する店長を横目で見てから、僕は缶コーヒーの残りを飲み干した。缶をゴミ箱に放り投げたが、僕の腕では見事にシュートとはならなかった。

「じゃあ僕らも帰ろうか。眠いし」

「はい」

店長はスマホをポケットにしまい、代わりに車のキーを取り出した。僕は地面に転がる缶をきちんとゴミ箱に入れて、黒い車の助手席に乗り込んだ。



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