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「ただいまー」

店長が引き戸を開けたのと同時に、店の中に突風がなだれ込んできた。僕は手にしていた資料が少し離れた床に着地するのを見届けてから、店長に「早かったですね」と返した。

「思いの外さっさと話がまとまったからさ」

資料を拾い上げる僕の横を店長が通過し、彼はそのままソファーに腰を下ろした。

「早く帰ってこれたなら昨日のやつまとめてくださいよ」

「えー。あれはリッ君が自分でやるって言ったじゃん」

「店長にやってる時間がないと思ったから僕が買って出たんですよ」

僕がため息混じりに言うと、店長は「仕方ないなあ」と折れた。おそらくノートパソコンを取りに行くのであろう、彼は立ち上がると店の奥へと消えた。

僕は壁の時計を見上げる。午後四時。あと一時間もすれば荒木さんがやって来るだろう。ノートパソコンを手に戻ってきた店長と入れ代わりに、僕は店奥の暗がりへと姿を消した。



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