モグラは蝶ではない

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スーパーのお菓子売り場で僕は悩んでいた。今手にしているのはウエハースの入ったチョコレートの大袋菓子だ。しかしカゴにはすでに大袋が二つと、その他の細かい菓子がたくさん入っている。

僕は息をするのも忘れて脳みそをフル回転させた。何故今日に限って期間限定の新商品が三つも出るのか。このままでは買いすぎになってしまう。今は仕事前だし、それに僕は今日も自転車だ。今これを買うと買いすぎになってしまう……。

僕の背後からやって来た男性が、件のチョコレート菓子を無造作に二袋掴んでカゴに放り込んだ。僕は辺りを見回した。この商品の量が少ないタイプは置いていないのだろうか。例えば一人前だけ小箱に入っているような……。

隣の通路から小学生低学年くらいの女の子が駆けてきて、件のチョコレート菓子を手に取ると母親にねだった。母親はそのチョコレート菓子を見て、棚の値札を見て、女の子の顔を見て、その菓子をカゴに入れた。

去ってゆく親子の後ろ姿を見送り、僕は手にしていた菓子をカゴに入れた。スマホで時刻を確認する。どうやら少し悩みすぎたようだ。今頃カウンターの店長が大きなあくびをしていることだろう。