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門の前で突っ立っているその姿を見つけ、どうしようか迷ったが、僕は結局ゆっくりと自転車を漕いで姉に近づいた。時刻は午後十一時半。家の明かりが一つもついていないのを見ると、どうやら父親は今日も帰るつもりはないらしい。
「おかえり陸」
「何しに来たの」
挨拶は返さず、僕は代わりに質問を放り投げた。珍しいことに、今日は姉一人のようだ。本当に珍しい。
「ちょっと荷物取りに来てさ。悪いけど、陸取って来てくれね?」
「自分で取りに行けばいいでしょ」
「ここもうウチの家じゃないし、勝手に上がったら不法侵入だろ」
「僕が許可するから自分で取りに行ってよ」
僕は庭の指定の位置に自転車を停めると、ポケットから取り出したカギを玄関の鍵穴に突っ込んだ。ガチャリと音がして鍵が開く。塀にもたれていた姉は僕の後に続いて家へ上がった。
「何も変わってねーなあ」
「ついこの間来たところでしょ」
「そういやそうだったな」
姉はへらっと笑いながらそう言ったが、そのあと「あの時はよく見てる余裕なかったからさ」と付け足した。廊下を先導している僕には、今姉がどんな顔をしているのかわからない。
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