38
「また雨ですか……」
顔を上げた荒木さんがそう呟いた。僕はちょうど店内にファイルを取りに来たところで、一呼吸おいてソファーの店長が返事をした。
「最近多いよね」
「ですよね。今日傘持ってきてないんで、帰りまでに止むといいんですけど……」
「どうせまた通り雨でしょ」
楽観的な返事をする店長に、荒木さんも同意するようなことを言った。八月に入ってから通り雨が多くなった。それに比例するように客の入りは減る一方だ。
「瀬川君はちゃんと傘持ってきてる?」
荒木さんの質問に僕は首を横に振って答えた。
「やっぱ置き傘しとかなきゃダメかな?」
彼女は呟くようにそう言い、再び目の前のファイルに視線を落とした。確かに、考えたこともなかったが、置き傘というものはいつか役に立つかもしれない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます