37
「どうしたの、それ」
引き戸を開けて出勤した荒木さんの腕の中の物を見て、僕はついそう尋ねた。
「華道の授業で作ったの」
荒木さんはそう答えて、大きめの花瓶に活けてある花を軽く持ち上げてみせた。
「いつもは学校で処分してるんだけどね、今日のは上手くできたから店に飾ろうと思って」
荒木さんは一旦カウンターの脇にかばんを置くと、カウンターの端に花瓶をそっと置いた。
「個人的には会心の作だったんだけど……やっぱりへたっぴかな?」
僕の反応が薄かったからか、荒木さんは少し眉を下げてそう言った。正直僕に花の善し悪しはわからないが、とても素敵だと答えておいた。事実、それは嘘ではなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます