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僕の手から滑り落ちた数冊のファイルが、床に着地して盛大な音を立てた。僕は緩慢な動きでそれを拾う。

「どうしたのリッ君」

ソファーでテレビを見ながらノートパソコンを叩いていた店長がちょっとこちらを振り返って言った。僕はその言葉を「ファイルを取り落とすなんて体調でも悪いのか」という意味だと解釈した。

「ただの寝不足です」

「規則正しい生活してるリッ君には珍しいね」

「学園祭の準備でクラスが盛り上がってるんですよ……」

僕はうんざりした顔でそれに答えた。と、ここで引き戸が開く音が聞こえた。荒木さんの「おはようございまーす」という挨拶が聞こえる。

姿を現した荒木さんに店長と僕は挨拶を返し、さっそく雑談し始めた二人を置いて僕は自室へと戻った。パソコンの前に座って一つあくびを零すと、先程のファイルを開き、業務に戻った。



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