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信号待ちをしていると、目の前の親子が空を指差したので僕も見上げてみた。こんなにちゃんと空を見上げたのなんていつぶりだろう。何ヶ月、下手したら何年。
僕は青い空を飛び回る白い鳥を見つけた。群れからはぐれたのか、そもそも群れない種類なのか、鳥に詳しくない僕には判別がつかなかった。
白い鳥は暇を持て余すようにくるくると旋回し、気まぐれに僕の視界の外へ消えていった。
自由に飛び回る鳥。鳥は僕の手の届かない空を思い通りに進むことができる。魚は、僕が溺れている間にキラキラと輝く水面へと辿り着く。羨ましいと思っていた。だが今は、鳥や魚はこの陸の上を僕のように走ることは出来ないと思っている。
子供がはしゃいで空に手を振った。どうやら親子が見ていたのは鳥ではなく、尻尾を伸ばしながら直進する飛行機だったらしい。
信号が青になった。僕は横断歩道に一歩踏み出した。
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