26
僕は口元に並べた両手にハァと白い息を吐いた。息のかかった両手は一瞬だけ温もりを感じ、すぐに冷たくなる。
「寒いね」
隣で先程の僕と同じ行動をした荒木さんが、通りを見たまま呟いた。僕達は今任務を終えたところで、店長の迎えの車を待っている最中だ。
「手袋持ってくるの忘れちゃった。瀬川君も?」
僕はその言葉に頷いた。僕も荒木さんもマフラーはしっかり巻いているのだが、手袋のことなんてすっかり頭から抜けていた。
「あ、雪」
荒木さんが宙に手の平を差し出すと、一粒だけ降りてきた雪の結晶がひらひらと手の平に着地し、そして溶けて消えた。
「初雪だね」
「帰りに積もってなければいいけど……」
「今日降るって言ってなかったし、そのうち止むんじゃない?」
僕と荒木さんは再び無言になり、白い塊が降る空を見上げた。まるで音が雪に吸い込まれてしまったかのような、静かな静かな時間だった。
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