八月。天気予報では真夏日と言われた今日も、僕は相変わらずバイトをしに朱雀店へ向かっていた。店の古ぼけた引き戸を開け、店内と外との温度差に驚く。

「おはようリッ君。今日も暑いね」

「寒いくらいクーラーつけといて何言ってるんですか」

店へ入ると、目の前のカウンターに座っていた店長がへらっと笑った。僕は彼の挨拶に小言を返す。

「今日昼には三十四度になるって聞いたからさ」

「まぁ店長の好きにしたらいいですけど。荒木さんにも同じこと言われると思いますよ」

どんなに暑くても汗ひとつかかないくせに何を言っているんだか。前から薄々感じていたが、やはり店長は人間を超越した存在なのかもしれない。そうではなかったら汗腺が死滅している恐れがあるので早めに病院へ行くことをオススメしたい。

僕は四、五分店長のくだらなさすぎる雑談に付き合ってから自室へ向かった。椅子に座ってパソコンの電源を入れる。あと一時間もすれば荒木さんが来て店の方が騒がしくなるだろう。パソコンが起動するとさっそく仕事に取り掛かった。今日はお客さんが来るだろうか。




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