235 竜狂いの森③

 産気づいた女性の介抱などわからなかったが、ジョットは戸惑いを胸にしまい、手を握って背中をさする。するとココの母は、思いがけない強さで手を握り返してきた。


「ありが、とう。ジョットくんがいてくれて、よかった……」


 せつな、ジョットは手を振り払ってしまいたい衝動に駆られた。繋がった手も、弱々しい声も、ジョットを止めるための足枷に映った。

 けれどそんなのは、焦燥が生み出した妄想に過ぎない。首を振って邪念を払い、ココの母を励ます。

 しかし拭いきれなかった一片の影は、またフィオから大きく遠ざかったことを、冷たく受けとめていた。

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