161 両親からの手紙②
『だけど、結果的にあなたを苦しめてしまったのね。ごめんなさい。ピュエルお嬢様が、婚約を申し込むほど本気だとわかっていたら……。それに、もうひとつ謝らせて。こんなことになるまで、私たちはあなたのフィオさんへの想いを、本当の意味で理解してあげられていなかった。今それをすごく痛感しているの。でもね、忘れないで。どんなことがあっても、母さんと父さんはあなたの味方よ。あなたの居場所はもちろん、お屋敷には知らせないわ。ジョット、最後に父さんからの助言を書いておくね。「押してダメならもっと押せ!」』
なるほど。こうしてあのガン攻め息子が爆誕したわけね。
くだらない思考に逃げてみても、強張った心臓は少しもほどけない。緊張なのか不安なのか、自分でも判然としない感情が押し寄せてきて、脳が酸欠を起こしていた。
「そうか。ドルベガで会った二人組みは、ジョットくんを捜しに来た人たちなんだ。悪い人じゃないっていうのは、そういうことで……」
では、彼らを差し向けた、人を動かせるほどの身分にある者は。
「ピュエル・リヴァイアンドロス。彼女が、ジョットくんを捜してる。婚約者の彼を……」
すとんと胸に落ちるものがあって、フィオは腕を投げ出した。にわかに笑い飛ばしたいような衝動が駆け巡る。
肩をくつくつと震わせながら、手紙を元通りていねいに畳んで、かばんにしまった。
「なんだ。悩むことなんてなかったじゃん。よかった。これで気兼ねなくシャンディ諸島に行ける」
ベッドに横たわるジョットをちらりと見て、フィオは背を向けた。
「ちゃんと送り届けてあげるよ。あなたを幸せにしてくれる未来へ」
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