147 格式高きルーメンレース!④
『さあ、先頭集団は約半分となりました。彼らにさらなる試練を与えるのが、第二の
『食ウ!』
『そおですっ! 赤を避けながら黄色を撃ち取らなければならない! もたついているとペナルティタイムがどんどん加算されていくぞお!』
『ソウダ争エ! 潰シ合エッ!』
災害用伝心石からは、雄叫びに近い歓声とドラゴンたちの吠え声が割れんばかりに響く。掻き立てられる闘争心に、視界がどんどん冴え渡っていくのを感じながら、フィオは次の
「ジン・ゴールドラッシュの順位とペナ数は!?」
『二位だ! しかし彼はゼロペナ! 実質一位だ! フィオさんは十六位!』
ランティスの声には少し焦りがにじむ。
ここを通過し階段井戸を抜ければ、あとは単純な速さ勝負。世界の果てとも呼ばれた、
つまりその時にはほぼ、順位が決まっているも同然になる。射撃と井戸を落とせばもう望みはない。
それを正しく理解し、声を強張らせる竜騎士に、フィオはのど奥で笑みを転がした。
「楽しもうよ。一秒を食らい合うこの
フィオさん。ランティスがつぶやいた声は、弾の装填音に掻き消された。
飛び交う石は赤も黄色も無視して、一気に障壁の中を進む。そして中間、赤岩の絶壁沿いに上昇へ転じてから、フィオはライフルを構えた。
しかしシャルルにはまだ回避に集中させる。前を飛んでいたドラゴンが、黄色い玉を追って急旋回してきた。それを難なくかわしたシャルルの筋肉が、プルプル震えている。
早く獲物を追いたいと訴えている。
その時フィオは、天井に跳ね返ってこちらへ飛んでくる黄色い飛跳石を見つけた。しかし左手、斜めから迫る赤い飛跳石のほうが速く迫ってくる。
「シャルル!
標的とはまったく明後日の方向へ指示を出す。だが迷いなく、シャルルは舵をきった。相棒の信頼に口角をつり上げ、フィオは照星を定める。
放たれた弾丸は赤い飛跳石に当たり、その後方にいた黄色い飛跳石にぶつかった。
それを見届けながらフィオはすばやく次弾を送る。再び天井に当たった黄色い石は、方向を変えて跳ねた。
シャルルが待ち構えている方角へ。
うなり声を上げて牙を剥き、シャルルは一気に詰める。その背中から、だめ押しとばかりにフィオは染料弾を放って動きを鈍らせた。
蛍光ピンクに染まった哀れなネズミは、ドラゴンの口に吸い込まれていく。
『抜けたあーっ! フィオ・ベネット選手、跳ね返りを利用した鮮やかな狩り! 十三人を抜いて一気に三位へ踊り出ます! 最高難度を誇るルーメンの
興奮した実況者と観客の声は風音と同じ、フィオの耳をなでてはあっという間に流れていく。はっきりと感じ取れたのは、相棒の得意げな喜びと、ランティスの静かに震えた声だった。
『フィオさん、わかったよ。
「ランティスさん」
フィオの不安がふくらむ。次は階段井戸だ。フィオの秘策を成功させるには、ナビとの連携が欠かせない。
現在三位とはいえ、後続はすぐあとを追いかけてきている。ひとつの判断、ひとつの行動が命取りになる、予断ならない状況だ。
住宅街の中、まるで地底の覗き穴のようにぽっかりあいた階段井戸レイラ・ヴァヴを捉えて、フィオはまっすぐに飛んでいく。
「ランティスさん、聞いて。階段井戸の攻略法、話しましたよね。私はやるつもりです」
『ま、待ってくれ! 練習で僕は一度も正確に指示ができなかった! そんな危険を冒すより、順当に行こう。それでも上位四位には入れる!』
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