97 凱旋 ランティス・ヒルトップ③

 伝心石からは深く長いため息が返ってきた。


『仕方ないわね。誤解を解くほうが大事だわ。しっかり説明して』

「はい。話が終わりましたらすぐ、ジョット様を追いかけます」

『ところで、ジョットはやっぱり例の女性レースライダーといっしょだったのかしら?』


 肯定を返すと、物を叩くような音が響いた。


『信じられないわ! 未成年を連れ回すなんていやらしい! ああ、かわいそうなジョット。きっと怖くて逆らえないんだわ。わたくしが助けてあげなければ……!』

「次のレースが開催されるのは、ルーメン古国です。行き先さえわかっていれば必ず追いつきますよ」

『頼むわね。次こそ吉報を待っているわよ!』


 かしこまりました、と男は見えない主に向かって深く礼をする。通信が切れた伝心石をしまいながら、ピュエルお嬢様の慈悲深い心に胸を熱くした。

 主のために、この任務必ず成功させなければ。

 決意を新たに、男はまず転写絵を撮られまくっている同僚の元へ、加勢に向かった。

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