一問目
正気を疑う提案に、宗吉は聞き返そうとするがその気力も沸かない。構わずに鼠は更に続ける。
「今から三つのなぞなぞをあんたに与える。それまでにあんたは俺の正体を当てる。簡単なクイズだ。ただし、もし三つ出し終わっても分からなければ……」
そうして、声を出して笑う。狂っている。いきなり肩を撃ちぬいてきて拘束した上に、訳の分からない難題を吹っ掛けてきた。宗吉は正気を失いそうになるが、頭の片隅でどことなく引っかかっている何かが、どうにか正気を保てる理由となっている。自分の過去を、忌まわしい蓋を開き出せば、そこに答えはあるだろう。但しそれは……傷口を自ら穿るに等しい行為になるが。
「それじゃあまず第一問。俺は、あんたの過去だ」
漠然としたヒント。とてもクイズに対するヒントとは思えない、ぶっきらぼうなヒントに、宗吉は歯ぎしりしつつ今はこの馬鹿げた提案に乗るしかない。頭の中で必死に、必死に考える。その度に肩の傷の痛みや体の熱も上がってくるが、我慢して脳を回転させた末に、宗吉は途切れ、途切れに。
「お前の……お前の正体は……」
「うんうん」
「……俺が、過去殺した組の幹部か、若頭あたりか」
「大外れだよ、馬鹿が」
大げさな、一種芝居がかった溜息を吐きながら、鼠は宗吉の目と鼻の先にまで近寄る。フードをガッツリと深く被っている為、歯だけが不気味に覗く。ニタニタとしながら宗吉に言う。
「やっぱりあんた、鈍っちまったんだな。なら、やる気が出る様な仕掛けをしてやるよ」
仕掛け……? その言葉の意味が分からず呆然としていると、鼠は何故だか人差し指を立てて何かを待ち兼ねているのか鼻歌さえしだす。その時だ。
「そろそろ来る頃かな。おっ、来た」
すると宗吉のズボン、後ろの右ポケットに締まっているスマートフォンがブルブルと振動している。この場合、着信があった場合の反応だ。鼠が後ろに回り、それを抜き出して応答する。そうして宗吉の耳元に当てると、そこから聞こえてきたのは――――。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます